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ヒトの胎児の脳細胞から「ミニ脳」の作成に成功 最先端の立体臓器「オルガノイド」とは何か?
胎児の脳から作成した実際のミニ脳は米粒ほどの大きさ(写真はイメージです) Sergey Nivens-Shutterstock
<オランダの研究者らが、中絶されたヒトの胎児の脳組織を使用して「脳オルガノイド(ミニ脳)」を培養することに成功した。iPS細胞を用いたものとはどう違うのか。オルガノイド作成の意義と歴史を紹介する>
「臓器(organ)のようなもの」が語源の「オルガノイド」は、試験管など生体外で栽培された3次元の構造体で、特定の臓器の細胞と機能を模倣します。拡大しても模倣した臓器とそっくりの解剖的な特徴を示しますが、大きくても数ミリメートル程度のため「ミニ臓器」とも呼ばれます。
オランダのプリンセス・マキシマ小児腫瘍センターとヒューブレヒト研究所の研究者らは、中絶されたヒトの胎児の脳から採取した細胞を用いて「脳オルガノイド(ミニ脳)」を培養することに成功したと発表しました。研究の詳細は、8日付の医学学術誌「Cell」に掲載されました。
オルガノイドは、多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)や生物個体のターゲットとなる組織幹細胞から形成されます。脳の場合、これまでは多能性幹細胞から脳細胞を誘導して本物のヒトの脳に近い構造を持つ「ミニ脳」を作成することには成功していましたが、様々な臓器の中で唯一、脳だけが該当する組織幹細胞から直接オルガノイドを作ることができていませんでした。
オルガノイドを作り出す技術は20世紀に生まれ、2010年代になって急速に発展しました。本研究の内容とともに、オルガノイドを作成する意義についても概観しましょう。
アルツハイマー研究の前進にも貢献か
ヒトの発生や疾患の研究を進めるとき、少し前までは二次元的に細胞を培養したり、マウスなどのモデル動物を使ったりすることが主流でした。ところが、2010年代になると、疾患モデルや薬物試験、再生医療において、オルガノイドが重要な役割を果たすようになりました。
たとえば、脳オルガノイドは神経疾患の研究に、肝臓オルガノイドは薬物代謝の研究に使用されています。私たちの臓器は複数種類の細胞で構成されており、それぞれが相互に作用して自己組織化し、秩序のある構造物を作っています。オルガノイドは実際の臓器どおりの3次元構造で複雑な環境をより正確に再現できることから、従来の2次元の細胞培養よりも優れています。
また、アルツハイマー病の研究にはマウスなどのモデル動物が使われますが、マウスは自然の状態ではアルツハイマー病を発症しないため、人工的に発症させなければなりません。アルツハイマー病の治療薬の候補は、実験に使用した動物に効いたものとしてこれまでに400種以上も見つかっていますがヒトにも効くとは限らず、画期的な治療薬は未だに見つかっていません。そこで、脳オルガノイドを用いたアルツハイマー研究が、期待されています。
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