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脳の認知機能を改善する血小板因子が特定される...若い血の輸血、抗老化ホルモン、運動による若返り効果の全てに関与か
運動が脳の認知機能に好影響を及ぼすことはこれまでにも良く知られており、運動に反応して体内に分泌される情報伝達物質(エクセルカイン)が媒介になっていると考えられてきました。ただし、エクセルカインの正体についてはこれまではよく分かっていませんでした。
今回、豪クイーンズランド脳研究所のタラ・ウォーカー博士らは、運動によってマウスの血液中にPF4が放出され、これが脳細胞の新生を促進させて認知力を改善させることを発見しました。研究成果は「Nature Communications」に掲載されました。
ウォーカー博士は19年、運動によって血小板が活性化され、血流にPF4を放出することを発見しました。今回、博士が「若い個体の血液」や「クロトー」の研究チームと同様にPF4を単独でテストしたところ、老いたマウスの運動誘発性の海馬前駆細胞が増殖し、認知能力が向上しました。つまり、運動の若返り効果はPF4が媒介していることが示唆されました。
これらの3つの成果は、若い個体の血液、クロトー、運動という異なるアプローチを組み合わせることによって脳の認知機能の改善に対して相乗効果を狙える可能性を示すだけでなく、関節痛などで運動の実行が難しい高齢者に対して他の方法でPF4の恩恵を得たり、個人に対して最も利益があって副反応の少ない方法を採用したりできることを示唆しています。
加齢による認知機能の低下は、ヒトの健康寿命を延ばすうえで大きな障害となっています。認知能力の回復の研究はまだ始まったばかりで、ヒトに対する適用まではまだ時間がかかりそうですが、実現すれば社会が大きく変わるかもしれません。
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