コラム

ヒトへの依存度が大きい犬種は? 嗅覚で視覚を補っている? 2022年に話題となったイヌにまつわる研究

2022年12月20日(火)11時20分

トキソプラズマに感染すると、ネズミはネコへの嫌悪感や警戒心が薄れて、ネコに捕食されやすくなることが知られています。さらに感染したネズミは、異性から選ばれやすくなると言います。

ヒトが感染すると、テストステロンやドーパミンなどのホルモンの分泌量が増加して自信にあふれた態度をとるようになり、異性から魅力的と評価されることが多いという先行研究もあります。研究チームは、今回のオオカミのケースでも、性格や行動に同様の変化が起きた可能性があると考察しています。

胎児の時は忌避すべきトキソプラズマの感染が、成人では異性にプラスの評価を得るきっかけになり得るというのは奇妙ですが、寄生虫が個体を増やして繁栄するための戦略と考えると納得できます。家庭犬はトキソプラズマに感染しても無症状の場合が多いですが、免疫力が落ちると、下痢、嘔吐などの消化器症状や、呼吸困難、痙攣などの神経症状を示すこともあるので、散歩中のネコの排泄物には注意が必要です。

来年もヒトの大切なパートナーであるイヌの研究が進み、「ヒトとイヌの関係」が双方に幸せな方向に発展するといいですね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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