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ノーベル賞2022の自然科学3賞と日本人科学者との関わり
人類学は「私たちはどこから来たか」の疑問に答える重要な学問で、ロマンもあります。けれど、進化生物学の分野はノーベル賞を取れないと言われ続けてきました。実際に、ノーベル賞で扱われない分野を補完する目的で設置された「クラフォード賞」は、対象分野が天文学と数学、地球科学、生物科学(特に環境や進化の分野)とされています。
「ノーベル賞を取り損なった日本人科学者」で真っ先に名前が挙がる1人が、木村資生博士(1924-94)です。「進化生物学の父」とも言える人物で、現代の進化論の礎となる「中立進化説」を提唱しました。分子レベルの遺伝子の変化の大部分はダーウィンの進化論で説かれた「適者生存」ではなく、突然変異や遺伝的浮動で「幸運なものが残る」という説です。木村博士は「生物学の最高レベルの賞」とされるダーウィン・メダルを、日本人で唯一受賞しています。「進化生物学では木村博士ですらノーベル賞は取れなかった」とも言われてきました。
木村博士の影響もあり、進化生物学は現在も日本が世界的に強いとされている分野です。日本人はペーボ博士の成果をいち早く評価し、20年に日本国際賞を授与したり、OISTの客員教授に招聘したりもしています。ペーボ博士のノーベル賞受賞は、日本の進化生物学界の悲願達成とも言えるでしょう。
「量子もつれ」の実在を証明、応用で量子コンピュータ開発にも寄与
量子力学は、ニュートン力学に代表される古典力学では説明できなかった現象を記述することができる現代物理学の根幹となる理論です。けれど理論が先行するため、提唱されるさまざまな事象が実際に存在するかは実験で証明されるまでは多くの論争が起こります。
「量子もつれ」は、2つの量子はたとえどんなに遠く離れていても、片方の量子の状態が変わると、もう片方の状態も瞬時に変化するという事象です。もともとは、アインシュタインも疑義を呈した理論でした。
アスペ博士とクラウザー博士は70年代から、「量子もつれ」が実在することを証明するための実験を始めました。最初に実験に成功したのはクラウザー博士でしたが、失敗することもありました。アスペ博士は、実験をより洗練されたものにして、失敗をなくしました。
ツァイリンガー博士は、「量子もつれ」を応用すると、情報を埋め込んだ量子から、離れた場所にある量子に瞬時に伝えることができる「量子テレポーテーション」が起きることを実証しました。この特性は、現在のスーパーコンピュータが数千年かかる計算を瞬時に行える「量子コンピュータ」の開発に役立てられます。
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