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生魚の寄生虫アニサキス、古今東西の日本に見る予防対策
酢や塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキスの幼虫は死滅しないため、サバをシメサバに調理してもアニサキス症の予防にはなりません。よく噛んで食べれば大丈夫と考える人もいますが、アニサキスアレルギーはタンパク質によって起こるので万全ではありません。
効果がある方法は、70℃以上または60℃で1分以上の加熱か、マイナス20℃(家庭用冷凍庫は一般にマイナス18℃)で24時間以上の冷凍で、幼虫は死滅します。自分で釣る場合は魚から速やかに内臓を取り除いたり、幼虫を目で確認して除去したりすることも有効です。
養殖魚にほぼいない理由
アニサキス症は古くからあった病気ですが、原因がアニサキス(線虫)の幼虫であると確定したのは1962年、オランダにおいてでした。日本での最初の症例報告は1964年です。
寿司や刺身など、魚の生食を嗜好する日本では、諸外国に比べて多数のアニサキス症が発生しています。厚生労働省によると、昨年のアニサキスによる食中毒の報告は344件で、食中毒の原因としては4年連続で最多となっています。
アニサキス症の最初の報告以来、これまでに全世界で確認されているアニサキス症の90%以上は、日本での症例です。
アニサキス症への対応は、古くからの食文化の違いにも現れています。
国内では、サバを生食する地域と生食を避ける地域が分かれています。福岡の郷土料理には、マサバの刺身を胡麻とタレであえた「胡麻サバ」があります。けれど、関東では生食は避ける傾向があります。
東京都健康安全研究センターの鈴木淳氏らは、日本海側と太平洋側ではサバに多く含まれるアニサキスが別種であることを突き止めました。さらに、日本海側に多いアニサキス・ペグレフィは内臓に留まりやすく、死後に内臓から筋肉に移動した個体は約0.1%でしたが、太平洋側に多いアニサキス・シンプレックスでは約10%が筋肉に移動したしたという研究もあります。つまり、日本海側の福岡では、サバの刺身を食べても比較的リスクが少ないと言えそうです。
ちなみに、養殖魚にはアニサキスはほぼいないと考えられます。特に濾過した海水を使う閉鎖式陸上養殖で、卵から人の手で育てた完全養殖の魚を、冷凍餌・乾燥餌で育てれば、生きたアニサキスが混入する可能性はほとんどありません。北海道では天然のサケを冷凍のルイベや加熱のちゃんちゃん焼きで食べますが、寿司のサーモンはほぼ養殖物なので生食が可能です。
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