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100年ぶりの新しい細胞分裂様式「非合成分裂」は教科書を書き換えるか?
もっとも、「非合成分裂」で作られた細胞は遺伝情報が異常な状態です。放置するとがん化などのリスクもあります。研究グループは、細胞分裂が活発な幼生で、もともと短期間で入れ替わる表層上皮細胞だからこそ採用された、急場しのぎの細胞分裂様式ではないかと考察しています。実際に、観察されたゼブラフィッシュでは数週間で非合成分裂による細胞を排除し、正常な細胞に入れ替わりました。
ところで、冒頭で「非合成分裂」は生物の教科書を書き換える可能性があると言いましたが、この仮説が広く受け入れられるには、他の研究グループによって「再現性」が確認される必要があります。今回のゼブラフィッシュの個体だけが特殊だったり、特別な細胞分裂ではなく単にがん化していたりする場合もあり得るからです。さらに言えば、どのような研究成果でも、捏造や研究者のトンデモ理論の可能性も考えなければなりません。
Natureは米科学誌「Science」とともに、世界で最も読まれ、最も権威のある総合学術ジャーナルです。掲載される論文は総じて質が高い、新奇性に富んだものが多いことで知られていますが、150年に及ぶ歴史の中では掲載が「勇み足」と思われる事例もありました。
例えば、後にイグ・ノーベル賞を受賞することになる「水分子は以前に溶けたものを記憶していて、現在はただの水でも記憶によって抗原抗体反応を起こす」と主張したフランスの免疫学者ジャック・バンヴェニストの論文は、1988年にNatureに掲載されました。2014年に日本で大騒動となった「STAP細胞」もNatureに掲載されたことが権威付けとなりましたが、Natureは 5カ月後に「重大な誤りが見つかったため」と論文を取り下げました。
「非合成分裂」は再現性をクリアして、細胞分裂の新しい議論のスタンダードになれるでしょうか。今後の動向を注視しましょう。
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