コラム

未来予想図の答え合わせ 100年前、50年前、そして50年後はどんな世界に?

2022年01月11日(火)11時30分
未来予想

50年後の未来は明るい? それとも…(写真はイメージです) metamorworks-iStock

<100年前、50年前の知識人たちが予想した2020年像はどのくらい実現しているのか? また、今日の専門家が描く2070年の世界の姿とは?>

2022年が始まりました。新しい年の幕開けに、今年はどんな年になるのかと予想する人も多かったのではないでしょうか。

今回は、スケールアップした未来予想をご紹介します。100年前、50年前の人たちは、2020年代をどのように予想していたのでしょうか。また、今日の専門家たちは、50年後の2070年の世界をどのように思い描いているのでしょうか。

人々は、希望と不安を持ちながら未来の世界を予想してきました。過去の人の想像力や、同世代の専門家の分析を楽しみましょう。
 
最初に紹介するのは、100年前の未来予想です。

1920年(大正9年)、雑誌『日本及日本人』春期増刊号では「百年後の日本」の大特集が組まれました。学者、思想家、文学者、実業家ら当時の知識人たち370人が回答を寄せ、挿絵が添えられました。

予想が当たったものには、『百年後の交通巡査(女)』(女性警察官の任用は1946年から)や「芝居も寄席も居ながらにして観たり聴いたりできる『対面電話』」(スマホでの動画視聴)、予想が外れたものには「巡空する『空中警察』」や『医学の大進歩 義首の発明』(義眼や義肢ならぬ人工の首)、現実が予想を超えたものには『世界的成金の豪遊振り』(予想ではエッフェル塔を飛行船から観光しているが、現実では宇宙旅行すらできる)があります。

narikin.jpeg

雑誌『日本及日本人』の「百年後の日本」特集に掲載された『世界的成金の豪遊振り』の挿絵

50年前には予想されていたインターネット

次に、50年前の未来予想です。

1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博、EXPO'70)は、アジア初かつ日本で最初の国際博覧会でした。いくつかのパビリオンでは、当時の先端技術の粋(すい)を集めて生活用品への応用を披露したり、将来の科学技術の発展を予言したりしました。

たとえばサンヨー館(三洋電機株式会社提供)には、「明日の生活環境への試み」として、人間洗濯機(ウルトラソニック・バス)、フラワー・キッチン、家庭用インフォメーション・システム、健康カプセルが展示されました。 

人間洗濯機は、装置の中で15分間座っているだけで体がきれいになるシステムです。楕円カプセル内の椅子に座ってスイッチを押すと、かけ湯、洗浄、すすぎ、乾燥が自動的に行われます。洗浄にはマッサージボールや超音波を使っていて、血行を良くする効果もありました。人間洗濯機の技術は、同社が2003年に発売した「座ったままで入浴ができる介護用入浴装置」で実用化されました。

フラワー・キッチンは、丸テーブルの中に冷蔵・冷凍庫、電子レンジ、ホットプレート、食器洗い機、食器棚などが配置されており、ボタンを押すだけで必要な装置を手元まで呼び寄せることができるシステムでした。

家庭用インフォメーション・システムは、5つのカラーブラウン管にテレビ、ビデオ、テレビ電話、映写機、電子計算機、電波新聞などの機能を呼び出すことができて、家庭にいながらビジネス会議や買い物ができる構造になっていました。このアイディアは、1995年頃からのPCとインターネットの普及によって実現します。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が

ビジネス

「クオンツの帝王」ジェームズ・シモンズ氏が死去、8

ワールド

イスラエル、米製兵器「国際法に反する状況で使用」=

ワールド

米中高官、中国の過剰生産巡り協議 太陽光パネルや石
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story