コラム

ネコはイヌより薄情? 2021年にわかった、ニャンとも言えない習性

2021年12月28日(火)11時30分
ネコ

ネコは飼い主に無関心?(写真はイメージです) chie hidaka-iStock

<イヌが飼い主に不親切な人を嫌うのに対し、ネコは平気でおやつをもらう──2021年に話題になった、ネコの習性にまつわるユニークな研究を紹介する>

ネコとヒトとの関係は、穀物を食い荒らすネズミを捕獲してくれる「財産の番人」として約9500年前に飼育されたことから始まります。

日本では現在、964万4千匹のネコが飼育されています(2020年ペットフード協会調べ)。もともと日本ではイヌの飼育頭数のほうが多かったのですが、2017年に逆転して以来ずっと、ネコの飼育頭数がイヌを上回っています。高齢化社会でイヌよりも相対的に小型なネコが飼いやすいと好まれるようになった、2010年代に「ネコノミクス」と呼ばれる猫ブームが起きた──などが原因と考えられています。

そんな身近なはずのネコですが、科学の世界では、イヌと比べて研究が少ないと言われます。ネコは研究調査に協力的な性質とは言い難いことも、理由の一つです。とはいえ、今年もネコのユニークな特徴が研究で明らかになりました。2021年に話題になったものをご紹介します。

1.4316匹の大調査! ネコの個性は7つの指標で分類できる

フィンランドのヘルシンキ大学の研究チームは、5つの性格と2つの問題行動の組み合わせでネコの個性が分類できると発表しました。さらに、品種によって明確な違いが現れたといいます。
研究チームはネコの飼い主を対象に、猫の性別や年齢、種類、どんな活動をしているかなどを尋ねる138問のアンケートを行いました。飼い主には一度回答してから一定時間が経過した後に、もう一度アンケートをして、より正確な結果を得られるようにしました。

最終的に情報が得られた4316匹のネコについて分析したところ、「活動的で遊ぶのが好き」「怖がり」「人間に対する攻撃性」「人間に対する社交性」「ネコに対する社交性」の5つの性格と、「トイレを嫌がったり使い方が下手だったりする」「過剰なグルーミング(毛づくろい)」の2つの問題行動で個性を言い表せることを発見しました。

さらに、これまでも経験則でも言われてきたことですが、今回のアンケート調査でもネコの品種によって性格の傾向が変わることが示されました。

たとえば、最も活動的なのはベンガルで、動きたがらないのはペルシャとエキゾチックショートヘアでした。最も怖がりなのはロシアンブルーで、怖がらないのはアビシニアン。人間に最も攻撃的なのはターキッシュバンで、攻撃性の最低スコアはアメリカンカールでした。人間に対する社会性は、シャムとバリニーズが最も高く、ペルシャとエキゾチック(ショートヘア、ロングヘア)が最低でした。ネコに対する社交性では、オリエンタル(ショートヘア、ロングヘア)が最高、ターキッシュバンが最低でした。

品種による傾向があるといっても、ネコの個性は1匹ずつ異なります。愛猫家は調査結果に振り回され過ぎずに、長所や短所の傾向をより良い関係を築くヒントとして捉えれば、ネコとのコミュニケーションに役立ちます。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、トランプ氏の「今週合意」発言にコメントせず

ワールド

対米貿易協議は難航も、韓国大統領代行が指摘 24日

ビジネス

中国、国有企業に国際取引の元建て決済促す 元の国際

ワールド

ローマ教皇フランシスコ死去、88歳 初の中南米出身
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 3
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 4
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ペー…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 9
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 10
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 9
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 10
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story