コラム

未来の女性首相はどのタイプ? 哺乳動物の「メス首長」に見るリーダーの資質

2021年10月12日(火)11時30分
ニホンザル

基本的にニホンザルの社会も年功序列(写真はイメージです) karutasu53-iStock

<長期政権を打ち破った高崎山のメスザル、経験値で群れを率いるゾウ、オスよりも体が大きくなるブチハイエナ──ヒトと同じ哺乳類で、集団生活を営む動物の社会から「女性リーダー像」を考察する>

10月4日に臨時国会が招集され、首班指名選挙を経て岸田文雄氏が第100代内閣総理大臣に決まりました。

もっとも、岸田氏が次期首相になることが事実上決定したのは、9月30日に行われた第27回自民党総裁選に勝利した時でした。首班指名選挙では多くの場合、与党第一党の党首や総裁が総理大臣に選出されます。つまり、現在は自民党が国会で多数の議席を有しているため、自民党の総裁選びは次の総理大臣に直結するのです。

今年の自民党総裁選の大きな話題は、4名の候補者(岸田氏、河野太郎氏、高市早苗氏、野田聖子氏)のうち2名が女性であることでした。1956年に始まった自民党総裁選の歴史の中で、これまでは2008年に立候補した小池百合子氏(現・東京都知事)が唯一の女性候補でした。

いっぽう、地方自治体の女性首長は増加傾向で、都道府県では、北海道の高橋はるみ氏、山形県の吉村美栄子氏、千葉県の堂本暁子氏、東京都の小池氏、滋賀県の嘉田由紀子氏、大阪府の太田房江氏、熊本県の潮谷義子氏と、歴代7名の女性知事が誕生しています。

さて、動物の世界に目を向けてみましょう。日本の首長と同じで、女性リーダーは珍しいのでしょうか。ヒトと同じ哺乳類で、集団生活をするタイプの動物を見ていきましょう。

年功序列を腕力で打ち破ったメスザル

哺乳類のうち群れを作るタイプでは、外敵(天敵や外部のオス)から仲間を守ったり、内輪で起きる喧嘩の仲裁をしたりする役目が必要です。哺乳類は、シロナガスクジラやヒョウアザラシなどのわずかな例外を除けばオスがメスよりも体が大きく力が強いので、群れのリーダーはオスが果たすことが大半です。

今年7月には、大分県にある高崎山自然動物園のサル群で女性リーダーが初めて確認されて、大きな話題となりました。

高崎山自然動物園は、野生のサルを餌付けして見せる観光施設として1953年に開園しました。現在は、B群677頭、C群362頭のニホンザルが、園内のサル寄せ場で生活しています。

ニホンザルはもともと、群れの中でオス社会とメス社会を作り、それぞれの社会で序列があります。群れ全体のリーダーはオスの1位(αオス)がなります。αオスは喧嘩が一番強いとは限らず、大抵は年功序列で決まります。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story