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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オーストラリアのRS ウイルス感染対策

画像:Pixabay Myriams-Fotos

RSウイルス((Respiratory Syncytial Virus:)呼吸器合胞体ウイルス)は、特に乳幼児や高齢者に重症化リスクがある呼吸器系のウイルスです。日本をはじめ世界中で毎年多くの感染が報告されており、特に冬季に流行する傾向があります。乳幼児や高齢者以外では風邪の症状を引き越し、通常は1-2週間で回復します。RSウイルス感染にはインフルエンザやコロナ感染のような抗ウイルス剤は無く、した場合は症状管理しかありません。特に乳児が重症化して細気管支炎になった場合は病院での酸素治療が必要となることもあります。

オーストラリアを含む多くの国々で、RSウイルスに対するワクチン開発が進められており、近年ではいくつかのワクチン候補が存在します。

オーストラリアでは今年から60歳以上の人に2種類のワクチンが認可されました。Arexvyは75歳以上の人、60歳以上のオーストラリア先住民、60歳から74歳の人でRSウイルス感染のリスクが高くなる疾患を持っている人に推奨されています。RSウイルスのリスクが高まる疾患には心臓疾患、慢性肺疾患、免疫不全などが含まれます。Abrysvoは妊婦にのみが許可されています。これらのワクチンは個人で購入する必要があり、政府のワクチンプルグラムには組み込まれていません。

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画像:Pixabay ExergenCorporation

乳幼児もRSウイルスの感染のリスクが高いグループです。乳幼児にはいくつかのモノクローナル抗体(ウイルス感染細胞等異物細胞は正常細胞にはない特定の目印を持つが、免疫細胞が、ウィルスを攻撃するためにこの目印に結合する為につくる抗体)治療が承認されています。Beyfortus (nirsevimab)は生まれてすぐの乳児から生後2年目までのRSウイルス感染のリスクが高い子供に使用が許可されています。他にもBeyfortus (nirsevimab)というモノクローナル抗体が認証されています。Beyfortus (nirsevimab)は現在西オーストラリア州、クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州で州のプルグラムのみで使用が承認されています。

RSウイルスワクチンは、世界中の人々の健康を守るための重要なステップです。特にパンデミックの影響で、他の呼吸器系ウイルスへの免疫が低下している可能性がある今、RSウイルスワクチンの普及は、公衆衛生上の優先事項となっています。RSウイルスワクチンはインフルエンザなどが流行する季節の医療施設の負荷を減らす効果も期待できます。




参考
https://ncirs.org.au/ncirs-fact-sheets-faqs-and-other-resources/respiratory-syncytial-virus-rsv-frequently-asked
https://www.health.gov.au/resources/publications/atagi-statement-on-the-clinical-use-of-arexvy-rsv-pre-f3-vaccine-for-rsv?language=en
https://www.health.vic.gov.au/immunisation/respiratory-syncytial-virus-immunisation

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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