ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々
ミャンマードキュメンタリー映画「夜明けへの道」最速レビュー
おはようございます。
ミャンマー在住10年、一応こちらで映画製作のプロデューサーをし、映画祭で賞もいただいている新町です。
自分でもたまに言っておかないと忘れてしまうので改めて。
映画公開前にレビューするというのは何だか偉そうな感じで大変恐縮ですが配給元の太秦株式会社さんからのお願いという事でして僭越ながら大役を務めようと思います。
本題の前に一つお知らせです。
5月26日に東京都港区増上寺にて開催される「ミャンマー祭り」内のイベントでキングコングの西野さんと対談させていただきます。
チケットが発売中です。
様々なエンタメで世界へ挑戦し続ける西野さんと「えんとつ町のプペル」がつなぐ世界というテーマでお話しようと思います。
是非ともお越しください。
それでは本題です。
ドキュメンタリー映画「夜明けへの道」が2024年4月27(土)より
新宿K's cinemaほか全国順次公開されます。
まずは映画のトレイラーをご覧ください
この映画は2021年にミャンマーで起こった軍事クーデター後、デモ活動に参加したとして国軍より追われる身となったコ・パウ監督が民主派勢力支配地域やジャングルなどでの潜伏生活を綴ったセルフドキュメンタリー映画です。
ミャンマー最大都市ヤンゴンで著名人だったコ・パウ監督がその地位をかなぐり捨て逃亡、潜伏していく様子などが描かれています。
現在も終わらないコ・パウ監督の闘いの記録と言えると思います。
映画の中ではいくつも印象的なシーンや言葉がありました。
「民生だった少しの間民主主義を味わった」
仮初だったとしても2011年~2021年クーデターが起こるまで、ミャンマーは民主化へ向かう勢いがありました。
私は2015年の総選挙、2020年の総選挙をミャンマーで観る事ができましたが、日本のそれとは違い(特に若者の)物凄い盛り上がりが感じられました。
みんなこの国の未来に大きな希望を持っていたのだと思います。
そこからの転落を1人の芸能人の目を通して観る事ができます。
冒頭の軽いノリのコメディシーンなどからの落差が激しくて途中は少し精神的にしんどくなりました。
息子と電話で話しているシーンは子供と離ればなれに暮らしている私としては比べ物にならない寂しさと切なさを感じているであろう監督の心情が辛く突き刺さってくるような思いがしました。
父親として決して息子を過剰に煽ることはなくそれでも精一杯自分の子供の意思を尊重し、受け入れている様子に心を打たれます。
逃亡生活が時に精神的に過酷な様子が伺いしれます。
出会う全ての人が自分を脅かす存在となり得るからです。
しかしまた沢山の人々が逃亡を支援します。
監督が著名人であるということが時には助けになっています。
しかし、多くはピンチになるということが映画を観ていくとよくわかります。
私も催涙弾が家に撃ち込まれるという事件があり、すぐに家を出て避難するという経験をしたのでその時の緊迫感が少しよみがえりました。
きっと私の何倍もの危機感を何度も感じながらそれでも折れずに闘いを続けているのは本当に凄い事だなと感じています。
全体的に起こった出来事が淡々と進んでいく印象ではありますが、時折観る事が出来るか監督の心情と過酷な状況の中で写る自然の美しさなどが凄くこの映画の象徴的な部分だなと思いました。
この映画を観る人たちがどんなことを思うか。
映画を観てどんな事を感じて欲しいかを私なりに考えてみました。
この映画一つで今のミャンマー全てを理解する事はできません。
多くの事を得ようとするのは難しいと思います。
ただ。
たった一つで良いので映画を作った人が伝えようとしていることを観た人なりに確信して欲しいと思います。
それが何かは人それぞれだと思うのですが、何か「これだ!」と確信してもらえる事があると思いますし、それが凄く大事だと思っています。
答えは誰にもわかりません。
あなただけの確信を得るというのがポイントだと思います。
きっとそんなポイントがあると思います。
一つだけで良いので何かを得て欲しいのです。
そしてそれをさらにそれぞれの人が深く追求していってもらえたらとそう願います。
映画を観てコ・パウ監督がPDF(国民防衛隊というクーデター後に国軍に対抗する為に組まれた軍隊)のエンターティンメント企画をやっていたということに驚きと喜びを感じました。
どんな時でも人間にはエンタメが必要というのが私の信条なのでそれが一つ証明されたような思いがしました。
ミャンマーで闘う人たちを私が日本人として完全に理解する事は不可能だと思っています。
これまで何度もわかったつもりの自分に気付き恥ずかしくていたたまれない思いをしました。
ただ同じ国に住んでいるというだけで、私には知識も覚悟も何もかもが彼ら彼女らに比べて圧倒的に足りていないからです。
ただ、理解したいとずっと願い続けています。
せめて寄り添う術はないのかと探しています。
この映画を観る事はその願いの一助になる。
そんな作品だと思います。
ミャンマーに好意を持ち、ミャンマー支援などされている方がまだミャンマーをよく知らない大切な誰かと一緒に観に行く。
そんな映画になることを願っています。
以上、拙い言葉で綴る私の映画レビューを最後までお読みくださりありがとうございました。
それでは、また。
著者プロフィール
- 新町智哉
映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。
Twitter:@tomoyangon
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