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悠久のメソポタミア、イラクでの日々から

牧野アンドレ|イラク

リニューアルされた世界遺産:エルビル城塞

@iStock - dannymark

10月も終わりに差し掛かり、イラクはやっと外でゆっくりできる気温になっています。

お休みの日は日中でも家族連れが増え、中心地に行けばイラクの他の地域から来たアラブ人や欧米からの観光客も目にします。

さてそんな中、先週末久しぶりにエルビル市のど真ん中に位置するエルビル城塞を訪問しました。

最初の頃こそ時間があればぶらぶら入っていたっり外国から友人が来た際も案内はしていたのですが、ここ一年ほどは全く訪れていませんでした。

その間、エルビル城塞は大きなリノベーションを終えリニューアルオープンしていました。

今回はそのリニューアルオープンしたエルビル城塞をご案内します。

   

リニューアルされたエルビル城塞

エルビル城塞はエルビル市の中心部の小高い丘に位置するお城で、エルビルの街もこのお城を中心に同心円状に広がっています。

いわばエルビル市のシンボルと言えます。

メソポタミア文明の時代から人が暮らしており、約6,000年の歴史があります。まさに文明発祥の地の名にふさわしい途方もない歴史を誇っています。

2000年代初頭まで人も暮らしていたそうですが、彼らは城内の修復のために移住させられ、現在はひと家族だけが暮らしています。

エルビル城塞は2014年にユネスコの世界文化遺産に登録され、その後も発掘・修復作業が現在も続けられています。

本筋から外れますが、イラクに暮らしていてちょっと郊外に出るとよく数千年前の遺跡がそのまま放置されていることを目にします。

そういった文化財も早く保護さえれて人々が触れられる状態になるといいのですが。。

時は経ち2021年9月、エルビル城塞はさらにリニューアルオープンされます。

今まで一部のエリアしか解放されていなかったエルビル城塞に米国の支援で新たな施設がオープンしました。

さて、ここからエルビル城塞の簡単な写真ツアーをしようと思います。

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©筆者撮影

カイサリバザールを抜けて急なスロープを登るとエルビル城塞の正門に着きます。(ちなみに城内へ入域は無料です。)

運動不足気味の人は膝に手をつきながら登ったり、斜めに登る人たちもいます。

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©筆者撮影

登り切ると巨大な正門が見えてきます。

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©筆者撮影

ここから見る中央広場の風景は格別です。

正門を通ると城内に入ります。

エルビル城塞という名前の通り、ここは遥か昔からいくつもの戦争を経験しています。19世紀半ばにオスマン帝国による征服と20世紀のイギリスによる征服が最後ですが、その後も1990年代のクルド人同士の内戦でも基地に使われました。20世紀には3,000人近い人々が暮らしており、城内は一種の街になっていました。

では城内に入ります。

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©筆者撮影

城内に入ってまず目を惹くのが、この巨大なクルドの旗です。

かなりの大きさなので、エルビル市内で少し高い所にいけばどこからでも見ることができます。

城内をぶらぶらしていると、最近修復が終わった居住地が見られます。

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©筆者撮影

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©筆者撮影

まだ中に入ることはできませんが、いつかこれらも一般公開されることを期待しています。

こちらも立入禁止ですが、奥の方まで入ると修復前の建物の様子も見ることができます。

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©筆者撮影

古い建物が大好きな身としては、歴史を感じられるこれらの建物はたまりません。

修復が完了し開放されている場所ではたまに展示会も開催されています。

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©筆者撮影

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©筆者撮影

この日は地元クルドの写真家たちの作品の展示会が行われていました。

ではリニューアルオープンしたものも含め、城内の施設をご紹介しましょう。

   

Kurdish Textile Museum

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©筆者撮影

最初は以前からあったクルドの織物文化や農耕文化を紹介する博物館です。

こちらは2021年以前は城内で恐らく唯一の展示館でした。

入館料は300円ほどです。中では19-20世紀のクルドの織物文化・昔使われた農作器具を見ることができます。

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©筆者撮影

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©筆者撮影

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©筆者撮影

部族ごとに異なる織物の文様、またおじさん達が被る帽子の柄の違いを見ることができます。

   

Stones & Gems Museum

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©筆者撮影

お次は最近出来た中東地域の石や宝石を紹介する博物館です。こちらも入館料が300円ほどかかります。

元々は市内の別の所にあった博物館を展示物を増やした形で移転しました。

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©筆者撮影

中では中東地域やイラク南部で見つかった化石に加え、クルド自治区内で発掘された鉱物や隕石も展示されています。

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©筆者撮影

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©筆者撮影

石や鉱物が好きな人にとっては面白いですが、特にそういう趣味もない私にとってはあまり面白みはありませんでした。笑

   

グランドモスク

中央の旗近くにはこのようなきれいな尖塔(ミナレット)を持つモスクが建っています。こちらも建て替えを何度も経験しながらも数百年の歴史あるモスクとのことで、地元の人たちが誇るモスクです。

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©筆者撮影

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©筆者撮影

何度も塗り直されているのか中は小綺麗な感じですが、それでも歴史の長さを感じました。

人によって一般開放されている時間について異なることを聞くのですが、だいたい金曜日を除いた11時から1時の間でしたら開いている気がします。

    

Children's Interpretation Center

こちらが記事冒頭に紹介した、リニューアルに合わせて公開された新しい施設です。

ユネスコと米国の支援で作られたこちらのInterpretation Centerはエルビルとエルビル城塞の辿った歴史を紹介する目的で2021年にオープンしました。

中では多種多様なインフォグラフィックや音声などを使い壮大な歴史が分かりやすく解説されています。

こちらの施設は土曜日から水曜日まで9:00-17:00で開いています。入館料は無料です。

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©筆者撮影

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©筆者撮影

これらが施設の外観です。道を挟んで2ヵ所に施設があります。

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©筆者撮影

こちらは当時城内に住んでいた人の家で実際に使われていた暖炉です。当時のすす汚れがまだ見ることができます。

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©筆者撮影

文明発祥以前からのエルビルの歴史をインフォグラフィックで解説しています。

城内で発掘された楔形文字で書かれた粘土板の遺物などが紹介されています。

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©筆者撮影

こちらはエルビルが経験してきた戦いの歴史を紹介するコーナーです。

写真は紀元前331年にアレクサンダー大王がエルビルの郊外でアケメネス朝ペルシャを打ち破った「ガウガメルの戦い」の絵です。

アケメネス朝の滅亡が確定的となった重要な戦いがこの近くであったことに驚きました。

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©筆者撮影

こちらはエルビル城塞内で実際に暮らしていた人たちの紹介するコーナー。

こちらは300年近くここに住んでいたエルビルの支配者家族の解説です。

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©筆者撮影

エルビル市がお城を中心にどのように拡大していったかを紹介するコーナー。

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©筆者撮影

施設内ではユネスコのガイドさんがクルド語、アラビア語、英語で解説もしてくれます。

施設内で個人的に一番面白かったのがこの目の前の液晶パネルで経験です。

自分の名前をローマ字でタイプすると、メールで楔形文字に訳した自分の名前が送られてきます。

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©筆者撮影

こちらが実際に送られてきたメールの画面です。今度から楔形文字で書いて友だちにドヤ顔できること間違いなしです。

二階に上がるとクルドの文化を紹介したコーナーがあります。

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©筆者撮影

ベランダからの景色もちょっといいです。

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©筆者撮影

ここでは主に20世紀に録音されたクルドの伝統音楽を聴くことができます。

初めて訪れた感想として、エルビルについて改めて多くを学ぶいい機会になりました。

しかし実際に発掘されたものの展示などはなく、そこは少し残念でした。

恐らく今調査中で今後展示もされるのではと期待しています。

    

その他

最後に訪問時は残念ながら開いていなかった施設を紹介して終わろうと思います。

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©筆者撮影

こちらはTurkmen Culture House というクルド人と同じイラクの少数民族であるトルクメン人の文化を紹介した施設です。

こちらは残念ながら開いておらず、次回また別の機会に訪問しようと思います。

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©筆者撮影

窓から少し中が見えましたが、このようにトルクメン人の装飾品や日用品を紹介している建物のようでした。

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©筆者撮影

正門近くにあるこちらの施設。

アンティークショップと書かれていますが、ただのお土産屋さんです。

何度も訪れていていつも開いていたのに、写真も撮ろうと訪れた今回に限って閉まっていました。

噂によると、エルビル城内に唯一暮らすることが認められている家族が経営しているらしいです。

本日はエルビル市の象徴ともいえる世界遺産、エルビル城塞についてご紹介しました。

ぜひエルビルを訪れる際は中の施設も回ってみてください。

 

Profile

著者プロフィール
牧野アンドレ

イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。

個人ブログ:Co-魂ブログ

Twitter:@andre_makino

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