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ワールドカップ「退屈」日記

とりあえず、行ってきます

2010年06月11日(金)17時30分

 ワールドカップに行くのは4回目なのですが、現地に行くというだけで驚かれる大会は初めてです。

 え、南アフリカ、行くんですか。実際に行くっていう人に初めて会いましたよ。治安、大丈夫なんですか? あちらじゃ、マシンガンが1万円で買えるらしいですよ。日本代表のキャンプ地にも、猛毒コブラがいるらしいですよ。だいたい、日本人に合う食事とかってあるんですかね。ホント、気をつけてくださいよ......。

 日本戦は見るんですか? え、3試合全部見るんですか! でも、今回はだめでしょうね。やっぱり岡ちゃんだからですかね。なんで日本人って、決定力不足なんでしょうね。最初の相手、カメルーンですよね。アフリカ人の身体能力って、ハンパじゃないですものね。オランダは優勝候補なんでしょ。最後のデンマークは、みんな背が高いですもんね......。

 「南アフリカは危ないらしい」「日本代表はだめらしい」。大会を前に日本には、そんな2種類の空気が漂っているように思えます。でもこれから1カ月、その空気の中で過ごすとわかっているのも、なんだかつまらないですね。

 もうちょっと、本当のワールドカップの話をしたくないですか。本当のワールドカップって何だと言われるかもしれませんが、僕たちはこの手の大きなイベントを見る前に「こういうふうに見るとわかりやすい」というポイントを、教わりすぎてしまうきらいがあります。いうまでもなく、それらがすべて当たっているわけではありません。

 ワールドカップでも、もちろんエキサイティングな部分はあるけれど、退屈なこともあるでしょう。開幕直前の今も、南アで外国人記者を標的にした武装強盗が起きればニュースになりますが、起きなかったことはニュースになりにくい。ものごとの本質は、むしろ退屈な部分のほうにあるともかぎりません。

 現地に行ったから見えることもあるだろうし、行ったところで見えないこともあるでしょうけど、とりあえず南アフリカに行ってきます。

 猛毒コブラに本当に出合ったら、ダッシュで逃げます。

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BLOGGER'S PROFILE

森田浩之

ジャーナリスト。NHK記者、Newsweek日本版副編集長を経て、フリーランスに。早稲田大学政経学部卒、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)メディア学修士。著書に『スポーツニュースは恐い』『メディアスポーツ解体』、訳書に『「ジャパン」はなぜ負けるのか─経済学が解明するサッカーの不条理』など。