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レイプ事件を隠ぺいした大学町が問いかけるアメリカの良心
クラカワーの本で、レイプ裁判で加害者に無罪を言い渡した男性陪審員がレイプとは次のようなものだと断定している。「(1) A stranger jumps out from the bushes; (2) There is no (assault) unless the woman puts up a fight, to the death if necessary.((1)見知らぬ人が茂みから飛び出してくる (2)被害者の女性が死ぬまで抵抗しないかぎりは暴行ではない)」
知り合いの男性からの強制的な性交渉を女性が受け入れて生き延びたのだからレイプではないというのが彼の根本的な考え方だ。しかしこの男性は例外ではない。いまだに多くのアメリカ人がそう信じている。
一方でアメリカの大学は入学生に最初からレイプの定義を言い渡している。過去に性的な関係があっても、現在キスなどをする関係にあっても、途中でどちらかが「No」、「I don't want to do it」と意志を明らかにしたら、ストップしなければならない。相手が拒否や抵抗をしても性交渉を続けたら、それはレイプなのだ。「部屋に入れてくれた時点で許可を得た」というのは間違いだ。
問題は、それが学生の間に浸透していないことだ。だから、事件が起きてから被害者と加害者に分かれて争い、深く傷つき、人生を台無しにしてしまう。
本書を読めば、被害者だけではなく、加害者にも、そして加害者の親にもなりたくないと思うはずだ。
それを実感してもらうためにも、これから大学に行く高校生、親、教師、レイプ被害者を責める傾向のある人々、全員に読んで欲しい本だ。
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