「日本は特別」に固執していては、ロシアのように「時代遅れ」になるだけだ
TAKASHI AOYAMA/GETTY IMAGES
<ウクライナ侵攻で、ロシアの軍事技術が実は時代遅れだったと分かった。「世界の常識」から距離を置いて「技術鎖国」していては、日本も同じ道をたどることに>
5月9日のロシアの戦勝記念パレードは、以前から「プーチン大統領が『戦争宣言』をするのでは」「核攻撃を示唆するかもしれない」と世界の注目を集めていた。かつてない規模で生中継されて、固唾をのんで見守った人も多かったはずだ。私もその1人で、モスクワとの時差を調べて、BBCの中継を1時間ほど見てしまった。
報道されたように、プーチンの演説は予想とは違い、あっさりしていてテンションが低く、短いものだった。でも私にとって興味深かったのは、観覧席にいる見物客たちの中に最新型かそれに近いと思われるiPhoneで軍事パレードを撮影している人たちがいたことだ。それもコソコソとではなく、当たり前のように堂々とそれを高く掲げているので、こんな状況でもiPhoneは許されるのね? と笑ってしまった。
言うまでもなく、iPhoneはアメリカの巨大IT企業の主力商品である。ロシアのウクライナ侵攻後、欧米と日本の大企業はロシアでの事業停止(あるいは撤退)を決めたし、ロシアは対抗措置として外資企業が残した財産を国有化すると発表している。今や欧米企業とロシアは相いれない関係になってしまったように見える。
だが一般市民(観覧席の人々を「一般市民」と呼べるかどうかはともかく)は本音では、最新で便利で格好いいものは、相いれない他国のものでも使い続けたいのだろう。同時に、今さらiPhoneを排除するわけにいかないとも推測する。
圧倒的な軍事力を持っているはずだったロシア
ロシアの侵攻に世界中がショックを受けたのは、人権や世界平和、SDGs(持続可能な開発目標)が世界の常識となりつつある21世紀に全くそぐわない暴挙だからだ。それに現代は、強大な国家が国境に高い壁を造って国内の情報や世論、技術をコントロールできていた20世紀とは全く異なる。テクノロジーによって国境の壁は今までになく低くなっている。
技術に関して国境を閉ざしている国がどうなるかは、圧倒的な軍事力を誇ると見なされてきたロシア軍の、どうやら随分時代遅れらしい兵器に関する報道を見れば明らかだろう。
では日本はどうだろう。もちろんiPhoneも他のアメリカ製品も大人気だが、いまだに「日本は他の国と違う」「海外の常識は通用しない」といった言葉を聞かない日はない。それが日本製品の質を高めていこうという方向に行くのならばいいのだが、このメンタリティーのせいで旧態依然とした社会システム、硬直したビジネス慣行が変わらず幅を利かせてもいる。