鳴り響く空襲警報と、豊かな伝統・文化...「戦時下」イスラエルで見た複雑な「日常」

エルサレム旧市街を歩く治安部隊(3月20日、エルサレム、撮影:花井亨)
<大規模テロ事件から緊張状態が続くイスラエルだが、市民は日常を取り戻しつつある。現地取材で見えた、この国の「リアルな姿」とは?>
184日間にわたって開催される大阪・関西万博が2025年4月13日に開幕する。国際的なイベントである万博では今回、157の国と地域が参加し、47カ国のパビリオンが設置されるが、中東で独自の文化を誇るイスラエルも自国文化を紹介するパビリオンを開設する。
イスラエルといえば、長年パレスチナとの間で続いている中東和平問題に加え、2023年10月には、イスラム組織ハマスによる大規模テロ事件が発生。イスラエルによる軍事的な報復は周辺地域にも拡大し、不安的な情勢が国際的な注目を集めている。
これまでにイスラエル領内で1200人以上が犠牲に遭い、251人が誘拐されてハマスの実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に連れ去られるなど、一連の事件は世界を震撼させた。最近でも停戦合意の履行が停滞しており、テロへの報復と誘拐された人質の救出活動も続いている。
そうした状況下にありながらも、イスラエル国内では現在、国民が混乱の中で日常を取り戻しつつある。
今回、フォトグラファーの花井亨がイスラエルで現地取材を敢行。イスラエルにとって2025年大阪・関西万博の主要テーマでもある、伝統や文化、社会、経済、多様性など現在のイスラエルの姿を写真で切り取った。
まず向かったのは、エルサレムの旧市街。ユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」は、かつて存在したエルサレム神殿の西側の壁の一部だ。ユダヤ教徒が神殿の破壊を嘆き、祖国の復興を祈る場所である。