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お父さんはなぜ「プリン窃盗犯」扱いされたのか...3つの問題点を検証する

2025年4月7日(月)12時05分
印南敦史(作家、書評家)
プリン

P-fotography-shutterstock

<冤罪の研究は「人はなぜ間違えるのか」の研究。日常にあふれる人間の直感的・印象的判断を考える>


 今の私は「人間」に着目をして、冤罪という事象そのものを解き明かし、将来の冤罪を防ぐことを目的とした研究を続けています。
 責任追及ではなく原因追及の観点で冤罪を見たとき、でっち上げや捏造、改竄のような人間の悪意に基づく冤罪事件においてもその不正の前提には誤解や思い込みがあるということや、関係者全員がそれぞれの正義を追求した結果、悪意というよりも過失によって生み出されてしまった冤罪事件も存在するということが分かってきました。そして、誰もがこの誤りの渦に巻き込まれてしまうおそれがあるにもかかわらず、失敗が他人事と捉えられ、過去の冤罪事件の原因がそのまま放置される結果、同じような冤罪事件が繰り返されているのです。(「序章 人は誤る」より)

『冤罪 なぜ人は間違えるのか』(西 愛礼・著、インターナショナル新書)の著者は、冤罪についてこう述べる。2023年に上梓した初の著書『冤罪学』(日本評論社)が、専門書でありながら注目を集めた若手弁護士である。

注目すべきは、冤罪防止のためには、ただ関係者を批判して終わるのではなく「冤罪事件の教訓を学ぶことが重要」だという指摘だ。裁判官、検察官、弁護士といった法曹三者のみならず、警察官やマスメディアなど刑事司法関係者の協議が必要不可欠ということである。

当然ながらその根底にあるのは、冤罪のメカニズムをできるかぎり客観的・中立的に解明すべきだという思いだ。

そこで本書においては、冤罪の本質から、自身が関わってきた冤罪事件のプロセスにまで焦点を当て、冤罪をさまざまな角度から検証している。その考察は奥深く、とても読み応えがあるのだが、特に共感したのは冒頭の「冤罪とは何か」というパートだ。

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