タイの漁師にブラジルの砂丘、他にも... フィリピン観光PRの新映像、一部国外で撮影されていた
コロナ禍前に観光客で賑わうボラカイ島のビーチ(2018年4月) Erik De Castro-REUTERS
<現地ブロガーが指摘し、世界的なスキャンダルに。制作会社が撮影地を確認しないまま、数々の映像素材をつなぎ込んでいた>
【動画】物議を醸し、すでに削除されたフィリピン観光省のプロモーション映像
フィリピン観光省が新たにスタートした観光キャンペーン「Love the Philippines」の公式プロモーション映像において、フィリピン国外の映像が多数含まれていることが判明した。英BBCによると、制作元の現地広告代理店が謝罪。フィリピン観光省は動画の公開を取り下げ、現在映像を精査している。
このキャンペーンは6月27日に同国観光省が始動したもので、動画はその一翼を担うはずだった。問題の動画は、フィリピンの自然や文化などの魅力を1分45秒ほどで足早に紹介している。それぞれ1〜2秒程度のごく短いショットを編集でつなぎ込み、現地の観光スポットや訪れた旅行客らがアクティビティに興じる様子を次々に映し出すスタイルだ。
動画ではフィリピンの伝統舞踊や食文化、そしてスキューバ・ダイビングなど、国内各地のスポットで撮影された映像素材がふんだんに使用されている。しかしながら、こうした本来の映像のあいだに混ぜ込むようにして、ブラジルの砂丘で行われたバギー走行のアクティビティや、インドネシアのバリ島の美しい棚田の空撮ショット、そしてスイスの空港に降り立つ旅客機の映像などを使用していた。
バリ島で撮影された棚田や、ブラジルを駆けるバギー
動画は開始とともに、日の出や波しぶきなどの抽象的な映像をめまぐるしく映し出す。フィリピンとみられる都市部の空撮映像を経て、16秒時点で棚田の空撮ショットに切り替わる。斜面に構える水の張った田に空が反射する、美しい光景だ。だが、これはインドネシアのバリ島の棚田だ。
さらに、3つの短いショットを挟んだ3秒後の19秒時点では、朝日または夕陽を背景に、シルエット姿の漁師が水面に投網を打つ印象的な映像が挿入されている。これもフィリピンではなく、タイで行われている漁業の様子を撮影したものだ。
このほか判明しているものだけで、スイスの空港での着陸シーン、場所は特定できないが明らかにフィリピンのものではないイルカのジャンプシーン、ブラジルの砂丘を駆けるバギー、アラブ首長国連邦の映像など、フィリピン国外で撮影された映像が随所に混入している。
11年ぶりの新キャンペーンに冷や水
AFP通信は、「AFPのファクトチェック・チームが分析したところ、動画にはブラジル、インドネシア、スイス、アラブ首長国連邦の場所が映っていた」と述べ、国外の映像が使用されていることは事実であると裏付けている。
この問題は動画公開からわずか5日後の7月2日、フィリピンのブロガーであるサス・ロガンド・サソット氏がFacebookへの投稿を通じて最初に指摘した。同日AFPがこれを取り上げ、CNNやBBCなど海外の主要報道機関が続いている。
在オーストラリア・フィリピン人向けのニュースサイト「フィルタイムス」によると、新キャンペーンはパンデミックの収束にタイミングを合わせる形で、過去に11年間使用されてきた「It's more fun in the Philippines(フィリピンならもっと楽しい)」キャンペーンを一新するものだったという。