グリーンエネルギーのムラを補い世界で稼働? 電力を位置エネルギーに変換する「重力バッテリー」実用化へ
電力を位置エネルギーに変換して貯蔵するシステム「重力バッテリー」が注目されている...... Energy Vault
<電力を位置エネルギーに変換して貯蔵するシステム「重力バッテリー」は、太陽光発電などによる発電量のムラを吸収し、供給を安定化する手段として注目されている......>
閉鎖された鉱山を、巨大な蓄電設備として再活用する──。こんな研究が実用化へ向けて進んでいる。
重力バッテリーは、電力を位置エネルギーに変換して貯蔵するシステムだ。太陽光発電などによる発電量のムラを吸収し、供給を安定化する手段として注目されている。
市中の発電量に余裕のある場面では、電力網から供給される電力を消費し、重量の大きな重りを高所へと移動する。これにより、余剰電力を位置エネルギーの形で蓄えることができる。のちに電力が逼迫したタイミングで、重りを低所に下ろして発電するしくみだ。
米科学解説誌のポピュラー・メカニクスは、具体的に廃坑においては、砂を利用する研究が進んでいると報じている。坑道内に蓄えた大量の砂を電気モーターで地上に汲み上げることでエネルギーを蓄え、のちに地下まで下ろす際に回生ブレーキで発電する。
早ければ来年、プロトタイプが稼働
英BBCは、早ければ2024年にも世界初のプロトタイプがチェコの地下深くで稼働する可能性があると報じている。
この分野のスタートアップである英グラビトリシティ社は、地上の塔屋を使って小規模な予備テストを行っている。15メートルの高さから50トンの鉄の重りを下ろしたところ、250kWの電力を生み出すことに成功したという。同社は、小規模な実験でありながら、約750世帯を一時的にまかなえるだけの電力を得られたと発表している。
同社は現在、塔屋を建設せずにより大きな高低差を得られることから、廃坑の活用に注目している。廃坑の深さは少なくとも300メートルあるものが多く、ものによってはそれよりも深い。アメリカでも廃坑は約55万ヶ所に存在すると推定されており、導入の候補地は十分に存在するようだ。
研究を進める国際応用システム分析研究所(IIASA)は、世界合計で潜在的に最大70テラWhを蓄電可能だと見込んでいる。