安倍銃撃犯「山上容疑者」の動機をプロファイリングする
The Joker From Silent Hill
旧統一教会を恨む山上容疑者は「ジョーカー」(写真)に自らを重ね合わせ、元首相銃撃という犯行に及んだのか EVERETT COLLECTION/AFLO
<1300件以上のツイートと『サイレントヒル』『ジョーカー』、山上容疑者がネットに残した「足跡」から動機を読む>
「語られない感情が最も強い感情で、それは行動でしか表現されない。往々にして自分でも捉え難い感情が。捉え難いから言葉にならず、経過を見守るしかない」(@nnouu)
山上徹也容疑者が安倍晋三元首相を銃撃する10日前にリツイートした文章だ。山上は2019年10月に「silent hill 333」(@333_hill)というツイッターアカウントを開設し、1300を超える投稿をしている。元首相を暗殺したテロリストの心理が刻まれた資料だが、そこでは「語られていない」ものを含めて動機を解明することが必要だ。
山上のアカウント名は、ホラー映画『サイレントヒル』(06年公開)または原作の日本製ゲームに由来するとされている。
映画『サイレントヒル』は、カルト教団に対する復讐譚だ。米国東部の田舎町サイレントヒルで少女アレッサが魔女とされ、カルト教団の手で火あぶりにされる。全身やけどを負いながら救出されたアレッサはカルトと町民を呪い、町は業火に包まれ廃墟と化す。
そこに主人公ローズと、その養子で実はアレッサの血脈を継ぐ少女シャロンが呼び寄せられる。聖なる教会に立て籠もるカルト一派に手が出せないアレッサは、ローズを利用して教会に侵入、凄惨な復讐を果たす。
山上のツイートに映画『サイレントヒル』は一切登場しない。アカウント名を借用し、第三者を使った復讐劇という構図が実際の暗殺事件に酷似しているにもかかわらず、だ。
他方で山上は、事件直前に『カルトの子――心を盗まれた家族』著者で島根県在住のジャーナリストに手紙を送り、彼のブログに「まだ足りない」というハンドル名でコメントしていることを告白した。
「統一教会が信者を犠牲に築いて来た今を破壊しようと思えば、最低でも自分の人生を捨てる覚悟がなければ不可能」(20年12月12日)、「復讐は己でやってこそ意味がある。不思議な事に私も喉から手が出るほど銃が欲しいのだ」(12月16日)という内容だ。
しかし、同じ12月中旬のツイートを見ると、コメントほどの激烈な投稿はない。山上はかつて別アカウントでツイッターを運用していたが教団幹部殺害を示唆したために凍結されており、再開設したアカウント(@333_hill)での書き込みは当初、抑制の利いた内容だった。山上の論理と心理はリツイートを含めて行間を読まないと分かりにくい。