オミクロン後に起きること...本当にこれで「コロナ危機」は終わりなのか?

THE FOREVER VIRUS

2022年3月3日(木)17時11分
ネッド・ポッター、フレッド・グタール

220308P40_OMI_15v2.jpgELENA ZARETSKAYA/GETTY IMAGES

1月のアメリカでは、新規陽性者数が以前のピーク(昨年1月)の3倍以上に急増した。感染力が極めて高く、ワクチン接種の有無にかかわらず感染するため、世界人口の3分の1以上に当たる30億人が今後数カ月で感染する可能性があると、IHMEの科学者は1月初めの時点で語っていた。

「大局的に見れば、状況は好転するという希望を持っている」と、カリフォルニア大学デービス校の進化生物学者ジョナサン・アイゼンは言う。「だが細部、つまり現場の現実に目を向ければ、喜んでばかりはいられない。現実は極めて深刻だ」

現時点で最も問題なのは、オミクロンの感染スピードと規模だ。そのせいで、さらに多くの健康悪化と死がもたらされるだろう。

オミクロンは2020年のパンデミック発生当初のオリジナル株や昨年のデルタ株に比べ、重症化しにくいという良いニュースもある。ワシントン大学の研究チームは、定期的に収集・整理している各国の保健機関のデータ(この場合は特に南アフリカ、イギリス、デンマーク、ノルウェーのデータ)に基づき、感染者の「90%以上、ことによると95%」は無症状だと推定している。

多くの人は自分が感染していることにも気付かないかもしれない。これらの国々からの報告によると、昨年に多くの感染者や死者を出したデルタ株に比べ、オミクロンの致死率は「おそらく90~96%低い」と言う。

「状況は格段によくなる」と専門家

しかし、同時期に感染する人数が極めて多いため、病院や公衆衛生制度に負荷がかかっている。それほど重症化しないウイルスでも、感染力が強ければ多くの人々が入院する。また、高齢者や免疫力が低下している人などリスクの高い人々にとって、オミクロンは大きな脅威であることが分かっている。

米疾病対策センター(CDC)によれば、ワクチン未接種者の死亡率は接種完了者の13倍にも達する可能性があるという。一部の最貧国のワクチン接種率はアメリカの6分の1。後遺症が数カ月から数年続く「長期化」の影響についてはほとんど分かっていない。

オミクロンの感染拡大の波が落ち着いた後について、専門家の見解は分かれる。

IHMEの疫学者アリ・モクダッドは楽観的だ。「3月か4月頃にオミクロンがピークアウトすれば、今の状況は過去のものになるだろう。新たな変異株が現れる恐れはあるが、それ以外は非常にいい状況に感じられるはずだ。新たな変異株は現れないと確信できるまでは『正常』とは言えないが、状況は格段によくなるだろう。病院は逼迫せず、医療従事者は一息つき、人々は旅行し、状況が変わるはずだ」

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