最新記事
ウクライナ情勢

ロシア軍侵攻、ウクライナの人々は日本に何を求めているのか

2022年3月2日(水)18時19分
志葉玲(フリージャーナリスト)

在日ウクライナ人による渋谷駅前での反戦集会 (筆者撮影)

<「今、プーチンが殺そうとしているのは民主主義、自由、平和です」と訴える在日ウクライナ人。日本人にその自覚はあるか>

先月に開始されたウクライナへのロシア軍の大規模侵攻。各地での戦闘は激しくなるばかりで、市街地への無差別砲撃が行なわれ、クラスター爆弾などの非人道兵器が使われたとも報じられている。こうした中、ウクライナの人々は、日本や国際社会に何を求めているのか。都内で反戦アピールを行った在日ウクライナ人の人々を取材した。

在日ウクライナ人達が求める対ロシア制裁は

先週土曜の午後、JR渋谷駅のハチ公前広場に、在日ウクライナ人の人々や彼らを支持する日本人、ロシア人などの在日外国人達が約2000人(主催者発表)が集まり、プーチン政権によるウクライナ侵攻に抗議するアピールが行なわれた。この抗議集会では、戦争を止めるため、日本や国際社会にしてもらいたい措置などが呼びかけられた。それらは、

・SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの排除

・プーチン個人への制裁

・ロシアとの外交の停止

・石油やガス、金融含む、ロシアからの全輸入の停止

・ロシアの新興財閥と全ての政治関係者の財産凍結

・ロシアからのミサイルを防ぐためにウクライナの空域の封鎖

・ロシアへのハイテク機器の輸出の停止

・国連安保理常任理事国からのロシア解任を国連で協議すること

・ウクライナへ支援金を送ること

というものだった。このうち、筆者の独断と偏見で言えば、ロシアからの天然ガスの輸入停止が特に重要だろう。既に、SWIFTからの排除の動きで、ロシア主要銀行との決済が難しくなることが予想されているが、現時点では、ロシアの天然ガス大手ガスプロムに関係するガスプロムバンクは含まれていない。これは欧州が発電や暖房等での天然ガス需要の約4割をロシアの天然ガスに依存しているため、ガスプロムバンクまでSWIFTから排除すると、欧州エネルギー危機となり、経済にも悪影響が出ることを懸念したのだろう。だが、それは対ロシア制裁の効果を弱めてしまうことでもある。ロシアの政府歳入の約5割を石油・ガス関連収入が占め、文字通り国家の財政基盤であるからだ。

shiva20220302173402.jpg
反戦プラカードを掲げる女性の目は涙が溢れていた(筆者撮影)

そこで、重要なのが日本の役割である。ロシアの天然ガスの輸出先のうち、日本は1割弱程を占める。また日本のLNG(液化天然ガス)の輸入元でロシアが占める割合も1割弱程度。日本が率先として、ロシアからのLNG輸入を停止し、欧州にも輸入停止や輸入量の低減を働きかけていくということが必要なのではないだろうか。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中