「新・日英同盟」の始まりを告げる英空母「クイーン・エリザベス」来航が残した宿題
英空母「クイーン・エリザベス」を背後に記者会見に臨む岸信夫防衛相(9月6日、横須賀) Kiyoshi Ota-Pool-REUTERS
<英国の新型空母「クイーン・エリザベス」は太平洋地域で初めて日米などと合同演習「パシフィック・クラウン21」を行った。しかし、派手な活動とは裏腹に同空母はいくつかの課題を抱えており、日本への航海そのものが壮大な実験だった。英国の狙い、日本に期待することとは何か>
英国の新型空母「クイーン・エリザベス」の艦隊が9月4日、英国の母港、ポーツマスから2万キロ以上の航海を経て、日本に来航した。空母は4日間、横須賀の米軍基地の桟橋に接岸していたが、その姿を一目見ようと港の周辺には毎日大勢の艦船ファンが押しかけ、カメラを向けていた。
「クイーン・エリザベス」の日本来航については大手のメディアでも批判的な論調はほとんどなく、むしろこれを歓迎する意見のほうが多かったように思う。日英同盟の復活という歴史ロマンを感じるからなのか、見慣れた米軍以外の新しいパートナーの出現に新鮮味を覚えるためなのか、その来航は安全保障協力の域を越え、日英友好のために一役買ったと言えよう。
「クイーン・エリザベス」がインド太平洋に初めて展開する外交的な意義については今年3月16日、寄稿した「英国は日本を最も重視し、『新・日英同盟』構築へ──始動するグローバル・ブリテン」の中で詳しく述べているので、ここでは同空母が直面する課題と日本の役割について述べてみたい。
パシフィック・クラウン演習
「クイーン・エリザベス」の艦隊は5月に英国を出港した後、地中海やアデン湾、インド洋、南シナ海で周辺の同盟国、友好国と多くの合同演習を行ってきた。そのハイライトとも言える演習が、8月から9月にかけて東シナ海から日本の関東沖で4回に分けて実施された日本・英国・米国・オランダ・カナダの多国間演習、「パシフィック・クラウン21」である。
この演習は日英米が太平洋地域で行う初めての海空の合同演習で、日本からは海上自衛隊と航空自衛隊が参加した。演習の最大の目的は、参加国同士が協力して作戦を行う相互運用性(Interoperability)を試すことであったが、特に注目されたのは関東沖で行われた演習に米海兵隊と英国空軍のF35Bと航空自衛隊のF35Aという最新型の同型の戦闘機がそろって参加したことだ。
F35は第5世代の戦闘機と言われ、その高いステルス性能に加えて、同盟国や友好国の同型機との間で、レーダーや各種のセンサーで得た情報を共有できるネットワーク機能を備えており、航空戦の歴史に革命をもたらすとまで言われている。
今回の演習で日英米のF35が初めて合同の飛行訓練を行ったが、日本近海の洋上での航空作戦についてどのような知見を得ることができたのか注目される。
このように英空母「クイーン・エリザベス」のインド太平洋への展開は多くの成果を挙げてはいるが、その活動の多くがこれまで経験のない実験的な試みである点は指摘しておかなくてはならない。