中国系スーパーヒーローが活躍するマーベル新作映画が中国当局の気に障った理由
“Shan-Chi”Fans in China Call Government Decision Not to Release Movie a“Tragedy”
もっとも、中国人ファンは公開不許可を嘆く声ばかりではない。ネット上では、検閲当局が許可を渋るからには、それなりの理由があるはずだとのナショナリズム的な主張も飛び交っている。それに対し、既に映画を見た国外在住の中国人は、中国最大のミニブログサイト・新浪微博(シンランウェイボー)などを通じて、この映画には中国や中国文化を「侮辱するような」描写は一切ないと反論している。
「これは中国人のヒーローが活躍する映画だ。原作には物議をかもすキャラクターが含まれていたが、映画にはそうした人物は一切登場せず、中国語の会話や中国的な要素が盛り沢山だ。この映画が中国で公開されないのは悲劇としか言いようがない。私たちが語ってきた文化的な矜持や寛容性はどこに行ったのか」
中国の検閲当局が「過剰に神経質」になっていることや「被害者意識」にとらわれすぎていることを問題にする投稿もある。いずれにせよ、見ないうちから「反中映画」と決めつけないで欲しいと、国外在住者は訴えている。
マーベルの次作もダメ
『シャン・チー』は北米をはじめ世界各地で公開されているが、中国市場の興行収入を見込めなければ、マーベルの親会社ディズニーにとっては弱り目にたたり目となる。それでなくともコロナ禍で映画産業は大打撃を受けているからだ。
11月に公開予定のマーベル作品『エターナルズ』も中国では上映禁止になりそうだ。その理由は、メガホンを取ったのが中国系のクロエ・ジャオであること。ジャオ監督は前作『ノマドランド』でアジア系の女性として初めてオスカー監督賞に輝いた。
当初は中国メディアも『ノマドランド』が高い評価を得ていることを誇らしげに伝えていたが、今年3月にネット上でジャオの過去の発言が反中的だとして問題になると、風向きは一変。4月のオスカー授賞式でのジャオの歴史的な快挙は中国国内では一切伝えられず、授賞式の模様も放映されなかった。
『ノマドランド』は上映禁止となり、中国語タイトル『無依之地』のハッシュタグが付いた微博の投稿は、全て検閲で削除された。