最新記事

中国

中国系スーパーヒーローが活躍するマーベル新作映画が中国当局の気に障った理由

“Shan-Chi”Fans in China Call Government Decision Not to Release Movie a“Tragedy”

2021年9月9日(木)16時27分
ジョン・フェン

もっとも、中国人ファンは公開不許可を嘆く声ばかりではない。ネット上では、検閲当局が許可を渋るからには、それなりの理由があるはずだとのナショナリズム的な主張も飛び交っている。それに対し、既に映画を見た国外在住の中国人は、中国最大のミニブログサイト・新浪微博(シンランウェイボー)などを通じて、この映画には中国や中国文化を「侮辱するような」描写は一切ないと反論している。

「これは中国人のヒーローが活躍する映画だ。原作には物議をかもすキャラクターが含まれていたが、映画にはそうした人物は一切登場せず、中国語の会話や中国的な要素が盛り沢山だ。この映画が中国で公開されないのは悲劇としか言いようがない。私たちが語ってきた文化的な矜持や寛容性はどこに行ったのか」

中国の検閲当局が「過剰に神経質」になっていることや「被害者意識」にとらわれすぎていることを問題にする投稿もある。いずれにせよ、見ないうちから「反中映画」と決めつけないで欲しいと、国外在住者は訴えている。

マーベルの次作もダメ

『シャン・チー』は北米をはじめ世界各地で公開されているが、中国市場の興行収入を見込めなければ、マーベルの親会社ディズニーにとっては弱り目にたたり目となる。それでなくともコロナ禍で映画産業は大打撃を受けているからだ。

11月に公開予定のマーベル作品『エターナルズ』も中国では上映禁止になりそうだ。その理由は、メガホンを取ったのが中国系のクロエ・ジャオであること。ジャオ監督は前作『ノマドランド』でアジア系の女性として初めてオスカー監督賞に輝いた。

当初は中国メディアも『ノマドランド』が高い評価を得ていることを誇らしげに伝えていたが、今年3月にネット上でジャオの過去の発言が反中的だとして問題になると、風向きは一変。4月のオスカー授賞式でのジャオの歴史的な快挙は中国国内では一切伝えられず、授賞式の模様も放映されなかった。

『ノマドランド』は上映禁止となり、中国語タイトル『無依之地』のハッシュタグが付いた微博の投稿は、全て検閲で削除された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

BIS、中銀デジタル通貨の国境を越えた決済基盤プロ

ワールド

イスラエル軍、ガザ全域で攻撃継続 46人死亡 病院

ビジネス

アマゾン、第3四半期利益・売上高が予想超え ネット

ワールド

原油先物は続伸、イランがイスラエル攻撃準備との報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    「第3次大戦は既に始まっている...我々の予測は口に…
  • 10
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 8
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中