最新記事

ドイツ

ロックダウンで困窮のドイツ動物園、一部の動物を殺処分し、餌にする可能性......

2020年4月17日(金)17時30分
モーゲンスタン陽子

入場料による収入が皆無で、飼料も底をつきそう...... REUTERS/Annegret Hilse

<ロックダウンで閉鎖されたドイツ北部の動物園は「最悪の場合」大型肉食獣などに与えるため殺処分にする動物のリストを作成した......>

新型コロナウイルス対策の措置により、ドイツの動物園はすべて3月15日より閉鎖されている。多くの動物園が資金繰りに困るなか、ドイツ北部、ノイミュンスター市の動物園は「最悪の場合」大型肉食獣などに与えるため殺処分にする動物のリストを作成した。

入場料による収入が皆無で、飼料も底をつきそうな同園は現在、寄付金のみで操業している状態だ。「殺処分リスト」の存在を知った市民がフェイスブックで寄付を開始。さらに、20日より規制緩和で動物園も再開できそうだ。このまま最悪の状態を無事脱してくれればいいのだが......。

リストにある動物は殺処分され、クマなどの餌に......

ドイチェ・ヴェレによると、リストにある動物はヤギやシカなどだが、絶滅危惧種はまったく含まれていないと同園は断言している。殺処分された場合、同園のオオヤマネコ、ワシ、および3.6メートルもあるドイツ最大のホッキョクグマ、ヴィートゥスに餌として与えられることになるという。

最悪の場合の非常計画にすぎないと言われているが、「最悪の場合」とは資金不足のために餌となる魚や肉が調達できなくなった場合だ。「収入はゼロなのに、かかるコストは同じだ」と、同園ディレクターのヴェローナ・カスパリは言う。

資金繰りに困っているのはノイミュンスター動物園だけではない。だが、当面利用可能な資金で流動性を維持することが可能なライプツィヒ動物園は、殺処分は考えられないと表明。また、飼料がまだ足りているデュースブルク動物園でも殺処分はなく、かわりに「緊急時対応策として必要不可欠な飼育員」のリストを作り、残りのスタッフを解雇する方針のようだ。

寄付があつまり、規制緩和で再開できそう

ベルリンに本拠地を置く動物園協会(VdZ)は政府に1億ユーロの支援を求めている。ノイミュンスター動物園のあるシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州は動物園支援に500万ユーロを約束したが、まだ申請する方法がないという。意図的かどうかはわからないが、「殺処分リスト」の存在は宣伝効果をもたらし、ノイミュンスター動物園のフェイスブックページを通して寄付が集まり、5月中旬までは何とか経営のめどがついたようだ。

またドイツは15日、現在導入中の規制を一部緩和すると発表。バイエルン州などで日程の相違もあるが、衛生管理などの諸条件を満たせば、図書館などの施設および面積が800平方メートル以下の小売店が20日から営業を再開できる。動物園もこれに含まれるようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中