最新記事

韓国【文在寅政権の成績表】

韓国・文在寅政権が苦悩する財閥改革の現在地

2019年9月27日(金)17時30分
前川祐補(本誌記者)

朴槿恵政権時代の「崔順実ゲート」をめぐり国会で証言する韓国財閥の幹部(2016年12月) REUTERS/Jung Yeon-Je/Pool

<財閥と腹の探り合いを続けながら一定の成果も、見えない「理想の着地点」>

財閥や側近、官僚らとの癒着にまみれた朴槿恵(パク・クネ)大統領が、国民の激しい怒りを買い失職してから約2年半。クリーンで民主的な政治の立て直しを誓って発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、早くも折り返しの時期を迎えている。

文の就任以来、韓国は北朝鮮との南北融和でメディアの注目を集め続けてきたが、前政権の崩壊には長引く不況や所得格差など経済問題が伏線にあった。実際、文は17年の大統領選挙時に雇用創出や格差是正など、経済対策をふんだんに盛り込んだ公約を掲げていた。

それらの経済公約はその後、どのような展開を見たのか。本誌では【韓国・文在寅政権の成績表】と題して、有識者へのインタビューから経済政策の現在地を探る。

第1回は「財閥改革はどこまで進んだのか」。前政権崩壊の直接的な引き金になったと言っても過言ではない財閥問題に対して、文政権は何を行い、何を成し遂げたのか。

不法な経営権の承継や不当な優遇措置の根絶、横領・背任などの経済犯罪に対する厳正な処罰など、財閥問題の本丸に迫ろうとする文の公約は国民の期待を集めた。経済力の集中を緩和させ「民主的な経済」の実現を目指す文の財閥改革はどこまで進んだのか――。韓国の財閥事情に詳しい、日本貿易振興機構アジア経済研究所の安倍誠・東アジア研究グループ長に、本誌・前川祐補が聞いた。

* * *

――文政権の財閥改革の進捗について
文在寅大統領は、候補者時代から「財閥の狙撃手」の異名を持つ金尚祚氏(キム・サンジョ)を選対本部に招き入れ、経済ブレーンとして徴用した。そして、政権発足と同時に公取委委員長に任命した。つまり財閥改革においては金尚祚氏が全権を握って改革を進めてきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マスク氏、政権ポストから近く退任も トランプ氏が側

ワールド

ロ・ウクライナ、エネ施設攻撃で相互非難 「米に停戦

ビジネス

テスラ世界販売、第1四半期13%減 マスク氏への反

ワールド

中国共産党政治局員2人の担務交換、「異例」と専門家
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中