電気代に悩む時代が終わる? 卒FITで日本の電力事情はどう変わるか
下がり続ける太陽光の発電コストは、発電設備のない家の電気代にも大きな影響を及ぼす FernandoAH/iStock
<自宅で発電した太陽光の電気を、電力会社に一定価格で買い取ってもらう制度の終了「卒FIT」は、手軽に安く電気を使える時代に転換する契機になるとも期待される>
住宅用太陽光発電の電気を買い取ってもらえる固定価格買取制度(FIT)の対象電源が11月以降順次、買取期間終了の「卒FIT」となるのを前に、終了後の対応メニューを電力大手や新電力が相次いで打ち出している。特に、電機大手が自社の蓄電池を使ってもらうことを条件に、他社より高めの値段で買い取る戦略が目立つ。
自宅にそうした発電設備がない世帯が大半を占める中、「FITは自分に無関係」と考える向きもあるかもしれない。しかし「卒FIT」を契機に今後、電力購入の仕組みや価格が大きく変わる可能性も秘め、手軽に、より安く電気を使える時代が来るとも期待される。
23年までに165万件が卒FIT
「卒FIT」の対象となるのは、2009年11月に導入された「余剰電力買取制度」を初期から利用している家庭。制度開始当初、10キロワット未満の太陽光発電により生じた電気のうち、家で使わなかった分を10年間、1キロワット時当たり48円で大手電力が買い受けてきた。その期限がこのたび切れることとなる。
資源エネルギー庁によれば、19年だけで53万件、200万キロワットの太陽光発電設備が買取期間終了を迎え、20年以降も順次満了となる。09年に制度概要が発表された際、11年度には買取価格が42円に下がるとの見通しが示されたため、48円のうちに申し込もうとする利用者が09年に急増。また、11年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による再生可能エネルギーへの関心の高まりを背景に、その後も利用は拡大した。
それを受け、19年から23年までに計165万件、670万キロワットが卒FITの対象となる。太陽光発電設備を搭載した住宅は17年度に累積で約238万戸となり、戸建て住宅全体の8%程度となっている。
なお、低炭素社会の実現を目的として始まった余剰電力買取制度は、12年に対象を太陽光から再エネ全般に広げ、固定価格買取制度(FIT; Feed-In Tariff)に移行した。
FITの買取価格は低下傾向にあり、10キロワット未満の太陽光は19年度に1キロワット時当たり24円まで下がっている。今後も年2.7円のペースで下がり続け、24年度には10.3円になると、経済産業省は想定している。
自社製品を条件に高額買取
48円で買い取られてきた1キロワット時の電気が、卒FIT後はいくらに値付けされるのか、利用者らの間で発表が待たれていた。2019年に入り、従来買い取ってきた電力大手が相次いで公表し、1キロワット時当たり7~9円の価格設定を示した。価格面を見れば、太陽光や風力を手掛けるスマートテック(本社:水戸市)が打ち出した、東京、東北両電力のエリアでの11.5円、中部、関西、中国、九州の4電力のエリアで10円という購入額が好条件に映る。