最新記事

イラン

イラン、人工衛星の打ち上げに失敗 米国は安保理決議を無視したものだと非難

2019年1月21日(月)17時15分
鳥嶋真也

Reuters TV/via REUTERS

<イランが国産ロケットによる衛星の打ち上げを実施したと発表。米国などはかねてより、宇宙開発を隠れ蓑にして弾道ミサイルを開発していると非難を繰り返しており、今後の対応が注目される>

イラン宇宙庁及び国営メディアは2019年1月15日、国産ロケットによる衛星の打ち上げを実施したと発表した。しかしロケットのトラブルにより、打ち上げは失敗したという(発表文)。

米国などは打ち上げ前より、「国連安全保障理事会決議を無視するものだ」として打ち上げの中止を求めており、今後制裁強化などの対応が取られる可能性もある。

新型ロケット「シームルグ」

ロケットは15日(時刻不明)、イラン北部のセムナーン州にあるセナムーン宇宙センターから打ち上げられた。しかし、アーザリー・ジャフロミー情報通信技術大臣によると、1段目と2段目の飛行は順調だったものの、3段目の飛行中にトラブルが起き、軌道速度には達せず、打ち上げは失敗したという。ロケットと衛星はインド洋に落下したものとみられる。

打ち上げられたロケットは「シームルグ(Simurg)」という名前で、全長約27m、直径は約2.5m。打ち上げ能力は地球低軌道に350kgとされる。

シームルグには、イランの国産衛星「パヤーム」が搭載されていた。パヤームの質量は約90kgで、カメラによる地球観測や通信を目的と、防災や農業に活かすとしていた。

ジャフロミー大臣はまた、近いうちにさらなる衛星の打ち上げも予告している。

シームルグは、同国の弾道ミサイル「シャハブ5」を転用して開発されたと考えられている。さらにその技術は、北朝鮮の「銀河2号」ロケット、いわゆる「テポドン2」ミサイルをもとにしていると考えられており、両国間で技術者の交流があったとする報道もある。

シームルグの打ち上げは、試験打ち上げを含めると今回が3回目とみられる。最初の打ち上げは衛星を載せない状態での飛行で、宇宙空間への到達に成功。2回目は衛星を載せ、軌道投入を目指したが、失敗に終わったと考えられている。

イランの宇宙開発と安保理決議

イランの宇宙開発は2000年ごろから始まった。2009年には、「サフィール」という小型のロケットで衛星の打ち上げに成功。これまでに4回の打ち上げにより、4機の衛星を打ち上げることに成功している。このサフィールは、弾道ミサイル「シャハブ3」を転用して開発されたと考えられる。

また、ロシアや中国、イタリアなどから、衛星の技術も吸収し、小型衛星ながら国産化に成功していることが知られている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中