最新記事

ネイチャー

「怠け者の種」は生存率が高いことがわかった──代謝率と絶滅の関係調査

2018年8月24日(金)14時35分
高森郁哉

「怠け者の種」は生存率高いことがわかった hansgertbroeder-iStock

<米カンザス大学などが、貝類などの代謝率と絶滅の関係を調査したところ、代謝率が低い「怠け者の種」ほど、生き残る確率も高くなるということがわかった...>

貝類などの現存種と絶滅した種の化石から、代謝率と絶滅の関係を調査したところ、代謝率が高い種ほど絶滅する確率も高くなることがわかった。代謝率の低い「怠け者」の種のほうが、生存率が高いことになる。

カンザス大の研究

米カンザス大学などの研究者チームが実施した調査で、英王立協会が刊行する生物学分野の学術誌「Proceedings of the Royal Society B」(王立協会紀要B)に論文が掲載された。

研究チームは、現存種と絶滅種のサンプルの入手しやすさから、西大西洋の貝類を対象に調査を実施。鮮新世中期から現在まで約500万年間に生息した299種の軟体動物(二枚貝と腹足類)の代謝率(個体が1日生きるのに必要とするエネルギー量)を分析した。

その結果、絶滅した種の代謝率は、現存種よりも高くなる傾向が見られた。代謝率が低いほど、生き残る確率も高くなるという。

(参考記事)ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

コミュニティー全体でエネルギー摂取量は一定

研究チームはまた、新種の登場と既存種の絶滅が繰り返される過程のなかでも、各種が属するコミュニティー全体の累積的な代謝率は安定していることを発見した。エネルギー摂取の点で、コミュニティーのある種が絶滅しても、新種が誕生したり、既存種の個体数が増えたりして、バランスが保たれるからだという。

数百万年の間に、無数の種が絶滅したにもかかわらず、コミュニティー全体のエネルギー摂取量は変わっていないとしている。研究チームは、こうした研究成果を他の海洋生物に一般化できると考えているが、他の生物群にも当てはまるのかどうかは今後の研究課題だとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 2人負

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が

ビジネス

独VW、リストラ策巡り3回目の労使交渉 合意なけれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中