最新記事

中国

習近平、「南京事件」国家哀悼日に出席――演説なしに関する解釈

2017年12月14日(木)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2014年12月13日、南京事件、 初の国家追悼式典に出席した習近平国家主席 Aly Song-REUTERS

13日、南京での記念式典に習近平が出席した。習近平の演説がなかったことに関し日本では「日本に対する配慮」と報道しているが、これまでの流れを考えればこの解釈はおかしい。そこで中国政府高官に理由を聞いた。

日本のメディアは誰に忖度をしているのか?

12月13日、習近平国家主席が南京市で行なわれた「南京事件」国家哀悼日の記念式典に出席した。しかし習近平は演説せず、演説したのは元チャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員)の一人で、現在は全国政治協商会議主席である兪正声(ゆ・せいせい)氏だ。

このことに関して日本の多くのメディアは「日中関係(あるいは日本)に配慮したからだ」としている。

たとえば時事通信社は、習近平が演説しなかった理由を、「中国、異例の対日メッセージ=関係改善ムード維持」という見出しの記事の中で、「日中関係改善に向けた機運が高まる中、習氏は異例の形で対日メッセージを送った」とした上で、「対日批判の抑制を行なった」とまで踏み込んで書いている。

また朝日新聞DIGITALは、記事の見出しは「南京事件80年、習主席が3年ぶり式典出席」と客観的ながら、やはり「習近平(シーチンピン)国家主席が出席したが演説はしなかった。改善ムードにある日中関係に配慮した形だ」という解釈を付け加えている。習近平の心中に関して、ほぼ断定的だ。

いったい、誰に対して忖度しているのだろうか?

他の新聞もテレビも、ほとんどが、この「日本への配慮」という言葉を付け加えて報道することで足並みを揃えている。

中国政府高官に確認してみた

習近平政権が、日中戦争時代の1937年に日本軍が南京を占領した日である「12月13日」を国家哀悼日に定めたのは、2014年のことである。中国建国以来、初めてのことなので、最初の式典に習近平が出席し演説をするのは自然のことだろう。それまでは地方の行事でしかなかったものを、国家レベルに引き上げたのだから、むしろ演説しないとおかしいくらいだ。

2015年の記念日では、また元通り、南京市が属している「江蘇省」の人民政府が主宰して、中央の政治局以上の者は誰も出席していない。

2016年に、ようやく中共中央政治局委員で中共中央組織部の趙楽際部長が派遣されて演説をしている。

今年が「南京事件」の80周年記念に当たるからと言って、この流れの中で、再び習近平が演説するのは、筆者から見ると逆にしっくりこない。習近平の「格下げ」につながるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、利下げペースは緩やかとの想定で見解一致

ワールド

米制裁が国力向上の原動力、軍事力維持へ=北朝鮮高官

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3% 市場予想

ビジネス

バイオジェン、1―3月利益が予想超え 認知症薬低調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中