ブレグジット&ザ・シティ イギリス金融界は没落していくのか
11月20日、2019年に欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、この国で最大級の成功を収めた産業に打撃を与えるのだろうか。写真はロンドンの金融街シティの地下鉄バンク駅で10月撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)
2019年に欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、この国で最大級の成功を収めた産業に打撃を与えるのだろうか──。
金融サービスセクターは、英国経済生産の約12%を占め、他のどの産業よりも多くの税金を納めている。英国がEU離脱(ブレグジット)後、4億4000万人規模となるEU市場に対し自由なアクセスを失うことで、このセクターは潜在的に大きな損失を被る可能性がある。
数世紀にわたり「シティ」と呼ばれたロンドンの金融センターは、本来の中枢である「シティ・オブ・ロンドン」から、超高層ビルの建ち並ぶ東部のカナリーワーフ、そして豪華な集合住宅が集まる西部のメイフェアへと拡大してきた。
首都ロンドンは、世界の外国為替市場の頂点に立ち、国際的な債券やファンドの取引が行われ、世界中に存在するどの金融ハブよりも多くの銀行を集めている。
それだけにブレグジットの衝撃に対する脆弱性も高い。ロンドンの取引所やトレーディングルームで行われる取引の約3分の1には、EU域内のクライアントが関与しているからだ。
こうした状況から、一部の政治家やエコノミストは、ブレグジット後、ロンドンが金融センターとしての優越性を失うだろうと予言している。これに対して離脱支持派は、ルールを自ら定めることができるようになることで、長期的には英国に恩恵をもたらすと主張している。
ロイターはシティの運命を占うために、6つの指標を監視するトラッカーを作成した。公共交通の利用状況、バーやレストランの新規開店数、商業用不動産価格、雇用などを通じて、金融セクターの「定期健康診断」を試みるものだ。
「最初は、現在起きていることよる真の影響を評価することは難しい。非常に混沌とした状況になるからだ」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで銀行を中心に研究するトム・キルシュマイヤー教授は語る。「こうしたトラッカーは、現状の全体像を把握するのに役立つだろう」
英国が国民投票によってEU離脱を支持してから約17カ月が経過した。ロイターの指標は減速の兆候を示しているものの、激変と呼べるほどの衰えは見られない。