最新記事

中国外交

日中首脳会談、習近平はなぜ笑顔だったのか

2017年11月14日(火)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平と握手を交わす安倍首相(11月11日、マニラ) 首相官邸

11日の日中首脳会談で習近平は笑顔だった。習近平政権の基盤強化により反日の必要がなくなったからだという解説があるが、違う。中韓合意文書にある通り、反日はもっと具体化している。ではなぜ笑顔だったのか?

習近平、笑顔のわけ

11月11日、ベトナムのダナンで安倍首相と習近平国家主席が会談した。習主席は笑顔で安倍首相の方を向き、むしろ安倍首相の方が、またいつもの仏頂面をされるのではないかと警戒して、習主席ほどの笑顔を見せていなかった。それに対して正面を向いた習主席が不快な様子を見せるかと思ったが、なんと、笑顔。しかも穏やかな笑顔だ。

安倍首相も正面を向きながら、同程度の笑顔を見せた。

これに関して日本の一部のメディアでは、「党大会が成功裏に終わり権力基盤が盤石になったので、反日姿勢を国内に示さなくとも、反対勢力に利用されることはないから」といった、またしても権力闘争を軸にした分析が見られる。このような分析をしていると、日本はまた同じ過ちを繰り返すことになる。

習主席が笑顔を見せたのは、ひとえに一帯一路に日本を誘い込みたいからである。

日本を落せば、アメリカも落ちる。

逆に、アメリカが落ちれば、日本は必ず慌ててアメリカに追随するだろう。

だから、どちらか一国を落せば、習主席は中国が提唱する一帯一路大経済圏に、日米両国を従えることができるのだ。

日米は中国がトップリーダーとして君臨している経済圏に「中国に従う形」で入ってくることになる。

これこそが「中国の夢」であり、「中華民族の偉大なる復興」なのだ。

アメリカに追いつき追い越すには、まだ時間がかかる。

しかし、習近平政権の期間内に、中国が君臨する経済圏に日米が入ってくれれば、習主席は中国人民に「中国の夢を叶えた」と誇ることができ、「遂に中華民族の偉大なる復興を成し遂げた」として胸を張ることができるだろう。

「習近平新時代の中国の特色ある社会主義国家思想」が定義するところの「新時代」を実現化することができるのだ。

中国の「反日」は、以前よりももっと強固に具現化している。

中韓合意文書の存在を軽く見ない方がいい

その歴然たる証拠として、トランプ大統領の北京歴訪に合わせアメリカは当初、米空母3隻を含めた日米韓3か国による合同軍事演習を提案したが、韓国が反対し、日米、米韓がそれぞれ別々に実施することになった。トランプ大統領がどんなに強く日米韓3か国で同時に合同演習を行うよう要求しても、韓国の文在寅大統領はそれを拒否した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中