最新記事

韓国

「トランプ歓迎会に元慰安婦」の陰に中国?

2017年11月8日(水)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

これに基づいて、11月7日付のコラム「中国はトランプ訪日をどう見ているか」に書いた、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相の国会における以下の回答が成されているのである。

1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらないという韓国政府の既存の立場に変更はない。

2.韓米日安保協力が三者軍事同盟に発展することはない。

3.THAADの追加配備は検討していない。

これ以降、中国の貿易や観光などに関する対韓国政策が突然緩和したのを、日本の皆さんもご存じだろう。

康京和発言の中で日本と深く関連するのは「2」で、文在寅は「日本と軍事同盟を結ぶことは絶対にあり得ない」と何度も宣言している。中国は北朝鮮問題で対中包囲網が形成される危険性を、韓国を囲い込むことによって完全に打破したのだ。米中とは蜜月でいたい中国としては、狙うは日本だけなのである。

サンフランシスコからのメール――トランプは事前に知っていたのか

10月末から、突然サンフランシスコの反日華人華僑団体からのメールが増え始めた。在米コーリアンともタイアップしながら動いている団体だ。

そこには"comfort women" " sex slaves " という、目にしたくない単語が数多く使われている。そしてなぜか、アメリカのウィルバー・ロス商務長官の顔と肉声がある。話している内容は関係ない話だが......。

最初は、「なぜ――?」という強い違和感を覚えた。

しかし、あのストレートで感情をむき出しにするトランプ大統領が、ソウルでの歓迎夕食会に元慰安婦が同席していることに対して特に嫌な顔もせず、おまけにハグまでしたのを見ると、ひょっとしたら予め知っていたのではないだろうかという疑念を抱かせる。

だとすれば、日本ではあれだけ安倍首相との緊密さをアピールしていたトランプ大統領が、韓国ではそれなりに韓国民感情に添った反日につながる行動ができるというのは、日本人としては何とも複雑だ。

中国ではトランプ大統領が訪日前にハワイに立ち寄り、「真珠湾を忘れるな!」という、かつて真珠湾奇襲攻撃をした日本への反撃号令に相当する言葉を発したことを、相当に重要視している。トランプ大統領は、なぜハワイで日本に対する攻撃司令に相当する言葉を、いま、このタイミングで発したのだろうか?

さて、となると、トランプ大統領は習近平国家主席と、いかなる「密約」をするのか、注意していなければならない。高い武器だけ売りつけられて、気が付けば日本が外されていたというようなことにならないことを祈りたい。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中