最新記事

日本企業

「ポテチショック」に学べ 異常気象のリスクヘッジに備える企業

2017年10月5日(木)18時24分

10月5日、予想外の豪雨や気温急変などの天候不順が相次ぐ中、企業が気候変動ショックに備える新たな対策に動き始めている。ジャガイモ被害でポテトチップスが小売店の棚から消えた「ポテチショック」は象徴的な出来事で、国が予算措置で支援する事態となった。写真は北海道の中富良野の畑で2009年9月撮影(2017年 ロイター/)

予想外の豪雨や気温急変などの天候不順が相次ぐ中、企業が気候変動ショックに備える新たな対策に動き始めている。ジャガイモ被害でポテトチップスが小売店の棚から消えた「ポテチショック」は象徴的な出来事で、国が予算措置で支援する事態となった。

問題は「ポテトチップス」だけではない。「安心・安全」を求めて国産野菜にシフトした外食企業や天候で需要が左右される食品メーカーは、天候リスク戦略を一段と強化し、産地の分散や需要予測の高度化などに乗り出している。

消えたコーン

「具材が全く消えてしまったのは、初めてだった」。リンガーハット <8200.T>執行役員、購買チーム担当の杉野隆宏氏は昨年夏に北海道を直撃した台風の被害をこう振り返る。主力商品である「長崎ちゃんぽん」に入っていたコーンが豆苗に代わったのは、16年産コーンが通常の30―40%程度しか収穫できず、年間を通して安定的に提供することが難しくなったからだった。17年産はめどがつき、8月から9月にかけて、コーンが復活した。 

北海道を襲った台風は、消費者に身近なポテトチップスも翻弄した。最大手のカルビー <2229.T>では、原料のジャガイモ不足により、今年4月以降、一部商品の販売終了や販売休止に追い込まれた。

カルビーは、加工用として日本で栽培されているじゃがいも53万トンのうち30万トン、約60%を使用しており、なかでも、使用量の40%強を占める十勝地区が台風で大きな被害を受けた。天候不順による食品メーカーのリスクを改めて浮き彫りにした事態だった。

産地分散の試み

カルビーの原料部門を担うカルビーポテト(北海道帯広市)の植村弘之常務は「今年の生育は順調」と話す一方、気象変動に強いじゃがいもの調達実現は緊急課題であるとし、生産者と協力して、産地の分散や品種改革などに取り組んでいる。産地については、北海道内での地域拡充のほか、岩手県や宮城県、熊本県にも調達先を広げ、澱粉用じゃがいもの生産地や水田地帯での栽培を進める方針。これにより、5年後には2―3万トンの収穫を目指す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

経済の「デトックス」、必ずしも景気後退意味せず=米

ワールド

ポーランド大統領、核兵器の同国内配備を米に要請=F

ワールド

トランプ氏「欧州産ワインに200%関税」、EUの報

ワールド

ロシア大統領補佐官、停戦案「再検討必要」 米特使モ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 8
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 9
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 10
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中