最新記事

米外交

オバマの真似? トランプが中東でイスラム教徒に演説

2017年5月18日(木)16時50分
ハリエット・シンクレア

歴史的演説 2009年、カイロ大学でイスラムの西側の融和を呼び掛けたオバマ米大統領(当時) Larry Downing-REUTERS

<オバマ前大統領の歴史に残るカイロ演説から約8年。お膳立てはいいけど、期待に応えられるの?>

19日から中東・欧州を歴訪するドナルド・トランプ米大統領はサウジアラビアで、イスラム過激派との戦いを呼び掛ける演説を行う。

国家安全保障問題担当の大統領補佐官、H.R.マクマスターは16日、トランプがサウジアラビア滞在中にイスラム教徒が多い国の指導者50人に対し、イスラム過激主義と対決する必要性を語ると明かした。

ホワイトハウスの記者会見でマクマスタ―は、「この演説は文明社会の共通の敵に対して、広くイスラム社会を団結させ、またイスラム社会に対するアメリカの協力を約束するよう意図している。」と述べた。

【参考記事】中東和平交渉は後退するのか──トランプ発言が意味するもの

中東歴訪中、トランプはサウジアラビアでサルマン国王とお茶を共にするほか、イスラム過激派に対抗し、穏健派イスラムを奨励する新たなセンターの設立に参加する。マクマスタ―は、「センターの設立によりサウジアラビアを含むイスラムの友好国は過激主義や、犯罪や政治的な目的のために宗教を悪用するものに対し、一致して対抗できる」と加えた。

イスラム過激派に関するトランプのスピーチはこれまで、昨年の米大統領選中の演説で触れたものがほとんど。それも、内容はイスラム過激派がアメリカに及ぼす脅威について。イスラム教徒が多い国々からのアメリカ入国を禁止する大統領令でも、世界中のイスラム教徒から反感を買っている(入国禁止令は裁判所に差し止められた)。

【参考記事】サウジ国王御一行様、インドネシアの「特需」は70億ドル超

【参考記事】中東の盟主サウジアラビアが始めたアジア重視策

目指すはオバマか

大統領就任後初となる海外訪問で最初のスピーチの場にサウジアラビアを選んだトランプの決定は、バラク・オバマ前大統領が2009年にエジプトで「新たな始まり」を呼び掛けたカイロ演説を連想させる。オバマは選挙期間中から、アメリカとイスラム諸国の関係強化を目指し、大統領就任後の数カ月の間にイスラム国家で演説をすると宣言していた。

オバマは、イスラム教徒の友人や家族との個人的な体験を語り、イスラエルとパレスチナの二国家共存による和平に取り組む姿勢を示すとともに、イスラム過激化の危険を訴えた。

【参考記事】「父はムスリム」と胸を張ったオバマ

マクマスターは、トランプのスピーチ内容の詳細には触れていないが、オバマと同じような調子になるのか、そもそもそれがトランプの望みなのかは、まだわからない。

トランプの中東・欧州歴訪は、サウジアラビアを皮切りに、エルサレムでイスラエルのルーベン・リブリン大統領、ベツレヘムでパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長を訪問する。24日にバチカンでローマ法王と会談。25日にブリュッセルで開かれるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席する予定だ。

【参考記事】中東和平交渉はコッソリやれ

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米副大統領、トランプ氏を擁護 プーチン氏との会談巡

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使と会談 投資と安保「迅速な合

ワールド

トランプ氏のガザ構想は「新機軸」、住民追放意図せず

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中