トランプ政権の公的医療保険「改正」案、無保険者2300万人に
医療保険「改悪」に抗議する脳性麻痺患者のアルバ・ソノサ(5月9日、ニューヨーク) Shannon Stapleton-REUTERS
<病歴があると保険に入れない可能性あり、低所得者、高齢者、障害者向けの保険も削減。これがトランプが約束したグレートなアメリカか>
今月初めに米下院を僅差で通過した共和党のオバマケア(医療保険制度改革)代替法案。この法案が上院でも可決されれば、2026年までに2300万人の無保険者が出ると、米議会予算局(CBO)が発表した。
3月にトランプ政権が撤回した最初の代替案に比べれば、今回の法案は無保険者の数は多少改善された。しかし今回の法案にはオバマケアの規制を回避できる免責条項があり、州政府が認めれば、保険会社は既往症を理由に保険契約を拒否したり、保険料を高く設定できるようになる、CBOが問題にしたのはこの点だ。これが大きなネックになり、上院の審議は難航が予想される。
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ポール・ライアン下院議長ら共和党指導部は、今回の代替案では重病人や弱者が見捨てられることはないと主張していたが、CBOの報告書はそれを否定した形だ。
ライアンらに言わせると、新法案には弱者のための救済措置が盛り込まれている。州政府は免責を認める場合、病歴があるなど高いリスクがある人に「ハイリスク・プール」と呼ばれる救済措置を提供しなければならない。これに対して連邦政府が財政支援を行うことも法案に盛り込まれている。
「オバマケアは死んだ」?
これを根拠に、ドナルド・トランプ米大統領はオバマケアに守られていた人が無保険になることはないと断言していたが、CBOの試算によれば、救済措置は不十分だ。
CBOによると、免責条項により既往症を理由に保険料を割り増し請求できるようになれば、「ハイリスク」層の保険料は「じわじわ上昇」し、最終的には「保険加入を拒否されない場合でも、連邦政府の補助金では賄いきれないほど保険料が上がり、個人契約の包括的な医療保険に加入できなくなる」という。
一方、病歴などがない人は、今回の法案が通れば、保険料が下がる。そのため保険加入者が増え、多くの州では医療保険の財政基盤が安定すると、CBOは予測している。ただしCBOによれば、特に州政府が「エッセンシャル・ヘルス・ベネフィット」の免責を認めた場合、保険でカバーされない自己負担の医療費が増える。
免責条項は、前回の代替案を葬り去った共和党右派の主張に譲歩する形で盛り込まれた。共和党右派は、公的医療保険制度そのものに反対で、できるだけ政府の支出を減らしたがっている。免責のおかげで法案は下院で僅差で可決され、トランプは「オバマケアは死んだ」と勝利宣言した。しかしCBOの報告書を受けて共和党穏健派は免責条項に抵抗するとみられ、上院での成立は望み薄だ。
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