Readyforのプロジェクト実行者の6割は本職をほかに持つ人
[米良はるか]READYFOR株式会社 代表取締役
Photo: WORKSIGHT
<日本初のクラウドファンディングReadyforの米良はるか氏は、働き手の価値観が変化しており、組織に依存しない働き方が波及しているという。クラウドファンディングでお金を集めれば、最初の一歩のハードルも下げられる>
※インタビュー前編:実績32億円以上、行政の資金調達も担うクラウドファンディングReadyfor
働き手の価値観は変化していて、それに対応できる企業が優れた人材を獲得できるような気がします。
READYFORはいま従業員が60人くらい*。2016年に倍くらいにメンバーが増えましたが、それができたのはここで働きたいという人と価値観をしっかり共有できたことが大きかったと思います。
若い求職者は企業の志をチェックしている
まだまだ弊社は小さなベンチャー企業で、金銭的な見返りも確約できないのに、人材を募集すると学歴や経歴のハイレベルな人がたくさん応募してくれるんです。その中でも価値観のあった人を厳選させてもらうことができました。
特に20~30代の方々は企業の有名無名に関係なく、どういう志で何をしているのか、組織や事業が世の中の共感を得ているかというところを重視している印象を受けます。背景には、そんなにお金のかからない時代になったことがあるのかもしれません。あくせく働いてまでほしいと思えるものがないし、むしろモノとは違うところで幸福度が測られる時代ですから。
そういう状況だからこそ、それぞれの会社がどういうビジョンで、どんな価値を社会に提供していこうとしているかを意識する人が増えているということなんでしょう。
プロジェクト実行者の6割は本職をほかに持つ任意の集まり
採用に応募してくる人だけでなく、Readyforのサービスを使う実行者の方々にも、組織に依存しない働き方が波及していると感じます。個人や有志のグループで自立的な活動を展開するために、Readyforを通じて資金を調達するわけです。
実際、Readyforを利用している実行者の6割くらいが会社を持たない任意団体のような人たちです。その1人ひとりは現職が公務員だったり、大企業に所属する人だったりする。つまり、組織の垣根を超えて有志が集まり、プロジェクトを運営しているということです。
少し前なら退職してベンチャー企業を作る必要があったでしょうけれども、今はそういうリスクを取ることなく、クラウドファンディングでお金を集められます。手応えをつかんだら、そこで初めて退職して新しい会社を作ればいい。最初の一歩のハードルが下がっている時代なんです。
市場規模や売上の見込みといったことに振り回されて起業をしり込みするのではなく、柔軟にいろんな人とコラボレーションして、そこから生まれる面白そうなこと、わくわくするようなことを、立場や組織に関係なく実現できたらそれはいいことだし、健全なことだと思います。
2015年の「READYFOR OF THE YEAR」を受賞した、「マギーズ東京」設立のプロジェクト** はまさにそういうつながりで生まれたものです。がんのサバイバーの方が中心となり、そこに志を同じくする人が30人ほど集まってきた。全員プロボノですが、計画通り実際に豊洲に施設を作って、初日の記念式典には現職の厚生労働大臣まで参加した。みんなのネットワークで、ここまでレバレッジがかけられるんだという素晴らしいお手本だと思います。