最新記事
<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

サイバー攻撃で他国を先制攻撃したいドイツの本音

2017年4月11日(火)18時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

ドイツはこれまで密かにサイバー工作を続けていた(写真は儀式中に黙祷するドイツ連邦軍の兵士) Hannibal Hanschke-REUTERS

<ロシアからのサイバー攻撃に悩まされるドイツが今月、遅ればせながら連邦軍にサイバー部隊を発足。しかしドイツがこれまで、密かに友好国などにサイバー工作を仕掛けてきたことはあまり知られていない>

今月ドイツで、正式にサイバー部隊が発足した。

ブンデスヴェーア(ドイツ連邦軍)は、かつて西ドイツの首都だったボンに、「サイバー・アンド・インフォメーション・スペース・コマンド(CIR)」を設立した。260人体制でスタートしたCIRは、7月までに1万3500人規模になり、2021年までかけて軍隊として完全に機能させることを目指すという。CIRのサイバー兵士たちは陸軍や海軍、空軍の兵士たちと同等に扱われ、防衛のみならず、攻撃的なサイバー作戦にも従事することになる。

2016年6月、NATO(北大西洋条約機構)はサイバー空間が陸海空と同じ戦闘領域であると正式に指定した。米国防総省は2011年の段階で「サイバー空間作戦戦略」の中で、陸空海と宇宙に次いで、サイバー空間を作戦領域に加えているが、そう考えるとかなり遅いと言える。

ではなぜ今なのか。その背景のひとつにはロシアのサイバー攻撃がある。ドイツは、ロシアの仕業とみられる政党へのサイバー攻撃だけでなく、プロパガンダやフェイクニュースの拡散工作に悩まされている。なにしろドイツは今年9月に総選挙を控えている。

【参考記事】エクアドル大統領選に「介入」したアサンジの迷走

そんなドイツが、実はこれまでもサイバー空間で「暗躍」してきたことはあまり知られていない。世界的に見ると、サイバー工作を行っている国としてはアメリカや中国、ロシアなどが言われているが、ドイツも負けてはいない。

直近では2017年2月、ドイツの諜報機関である連邦情報局(BND)がサイバー工作をしていることが明らかになった。1999年から米ニューヨーク・タイムズ紙や英ロイター通信、英BBCなどの電子メールから電話、ファックスまでをスパイしていた。さらにレバノンやクウェート、ジンバブエ、インド、ネパール、インドネシアなどのジャーナリストたちもターゲットになっていた。

ロイター通信の場合は、アフガニスタンやパキスタン、ナイジェリアにいたスタッフが対象になっていたとのことだが、著者もロイター通信に勤務していた時代にアフガニスタンやパキスタンと頻繁にメールや電話でやりとりしていただけに、他人事とは思えない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは149円付近に下落、米関税警戒続く

ビジネス

味の素AGF、7月1日から家庭用コーヒー値上げ 最

ワールド

ロシア、2夜連続でハリコフ攻撃 1週間で無人機10

ワールド

シリア新暫定政府に少数派が入閣、社会労働相には女性
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中