最新記事

シリア内戦

国連が警鐘「アレッポで多数の住民が殺害されている」

2016年12月14日(水)17時30分
ジャック・ムーア

Abdalrhman Ismail-REUTERS

<シリア反体制派の拠点となっていたアレッポ東部を、アサド政権の政府軍がまもなく制圧する見通し。住民の避難が始まる一方、政府軍が住民を殺害していると、国連機関や人道団体が危機を訴えている>(写真:アレッポの住民はあてどのない避難を始めている)

 シリア・アサド政権の政府軍は、反体制派の拠点となっているアレッポ東部をまもなく制圧する見通しで、アレッポからは空爆と戦闘で疲弊しきった住民の避難が始まっている。同時に国連や現地の人道支援団体は、政府軍によって多数の住民が殺害されていると訴え、国際社会の救援を求めている。

 国連は今週13日、政府軍がアレッポ東部の家屋に押し入り、住民を銃殺していると発表した。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、アレッポ東部の複数の地区で、住民82人がその場で射殺されたという証言があった。犠牲者の内訳は男性58人、女性11人、子供13人とされている。国連人道問題調整事務所(UNOCHA)のヤンス・ラーク報道官は13日のツイッターで、「アレッポでは人道主義が完全に崩壊している」と痛切な言葉で現状を語った。

 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は13日、シリア政府軍の攻撃が最終段階に入り、「多数の民間人に対する残虐行為」が続いているという報告を受けたとして、危機感を表明した。アレッポの複数地区には数千人の市民が残っているという。

【参考記事】戦火のアレッポから届く現代版「アンネの日記」

 赤十字国際委員会(ICRC)は13日、アレッポの戦闘員に対し、民間人犠牲者を出さないよう全力を尽くしてほしいと訴えた。

「ホワイトヘルメット」という呼び方で知られるシリア民間防衛隊と、アレッポで活動するシリア系アメリカ人医療協会(SAMS)も今週声明を出し、アレッポに取り残された人々を救助するよう国際社会に訴えた。シリア政府軍に捕らえられた民間人は殺害される恐れがあるとしている。この声明では、「ここにとどまれば命に危険が及ぶ。女性は収容所に連行され、男性は殺害されるだろう。民間人を助けたことがわかれば、みな拘束されるか処刑されてしまう」としている。

「われわれと関係のある少年や成人男性が、何千人も拘禁されるのを目にしてきた。アレッポではこれまで、無数のホワイトヘルメット従事者、医師、看護師、人道活動家が狙われ、政府軍の非道な攻撃で命を落としている。政府軍は5年にわたってわれわれを殺害しようとしてきた。今ここで彼らにその機会を与えないでほしい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中