最新記事
トランプ、大統領就任控え過激な主張に「変節」の兆し
11月25日、選挙期間中には、対立を掻き立てるような乱暴な発言で聴衆を煽ってきたドナルド・トランプ氏(写真)だが、11月8日の大統領選に勝利して以来、その姿勢はいくぶん穏健なものに変わってきているようだ。(2016年 ロイター/Carlo Allegri)
選挙期間中には、対立を掻き立てるような乱暴な発言で聴衆を煽ってきたドナルド・トランプ氏だが、11月8日の大統領選に勝利して以来、その姿勢はいくぶん穏健なものに変わってきているようだ。
こうした方針転換は、選挙活動におけるトランプ氏の姿勢に批判的だった人々を喜ばせる反面、一部の熱心な支持者を怒らせてもいる。
もっとも、トランプ氏が強硬な態度を軟化させた例は、選挙期間中にも、しばしば見られた。したがって共和党の次期大統領として来年1月20日就任する前、あるいはその後にも、その立ち位置を変更する可能性はあるだろう。
以下に、トランプ氏が心変わりした例をいくつか紹介しよう。
●クリントン氏の捜査要求
「彼女を牢屋に放り込め」と気勢を上げる聴衆に対し、選挙運動中のトランプ氏は自分が勝利したら、民主党ヒラリー・クリントン候補が国務長官時代に私用メールサーバーを使った件で彼女を起訴する、と語っていた。さらに、クリントン氏の親族の慈善財団についても職権乱用と批判し、この件でもクリントン氏を追及する、と発言。10月9日に行われた2度目の大統領候補討論会でも、もし自分が勝利したら特別検察官を指名して、クリントン氏を刑務所に送り込むと発言した。
だが当選後、クリントン氏の訴追を求めないと報じられたことについて問われたトランプ氏は、「私は前進を望んでおり、後戻りはしたくない。また、クリントン一家を傷つけたくもない。本当だ」と22日付ニューヨークタイムズ紙(NYT)とのインタビューで語った。
ただし、捜査の可能性を完全に排除するのかとの質問に対しては、「排除しない」と回答した。
●「パリ協定」気候変動対策
トランプ氏は、地球温暖化はでっち上げだと主張しており、選挙期間中には、約200カ国の調印を得て11月4日発効した地球温暖化対策に関する2015年の「パリ協定」から脱退したいと発言。その代わりに、廉価な石炭、シェールガス、石油などの開発を推進したいと語っていた。
トランプ氏の政権移行チームに詳しい関係者は12日、気候変動対策協定からの脱退には理論上4年間を要するが、トランプ氏の補佐官らはより手っ取り早い方法を模索していると話していた。
だが、22日付NYTとのインタビューでは、米国は気候変動の取り組みから抜けるのかと問われたトランプ氏は「先入観なしに精査している」と語った。人間の活動が気候変動を生じさせていると思うかどうかと聞かれると、「一定のつながりがあると思う。何かしらあるのだろう。どの程度かということが問題なのだろう」と述べた。
●オバマケア
トランプ氏は選挙期間中に、オバマ大統領の医療保険制度改革(オバマケア)を廃止すると言っていた。トランプ氏はオバマケアを「災厄」と呼び、その代わりに低所得者向け「メディケイド」の運用に関して各州の裁量権を拡大する計画を導入し、さらに保険会社による州境をまたいだ保険販売を容認すると主張していた。
11日付のウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューで、トランプ氏は、26歳までの子どもを両親が加入する保険対象に含める措置や、既往症による保険加入の拒否禁止など、一部を維持することを検討していると語った。「オバマケアを修正するか、撤回して入れ替えるかだ」と、トランプ氏は述べている。
●移民問題
トランプ氏は選挙演説で、米国とメキシコとの国境に不法入国を防ぐための壁を建設し、その費用をメキシコ側に負担させると繰り返し約束してきた。また、何百万人もの不法移民を強制送還したり、テロ対策としてムスリムの入国を一時禁止したりする考えを示した。
トランプ氏はこうした発言を一度も撤回していないが、選挙戦の終盤では、テロを輸出している地域や確実な身元調査が保証されない地域からの入国を一時的に停止する案だ、と言い換えている。
13日に放送されたCBSテレビの番組「60ミニッツ」のインタビューのなかで、トランプ氏は「本気で壁を建設したいと考えている」と語った。しかし、壁の代わりにフェンスを使う可能性について質問されると、一部はフェンスを設置する可能性もあると答えた。「地域によってはフェンスを使うかもしれないが、壁の方が適切な地域もある。これは私の得意分野だ。建設だからね」と発言している。
不法移民の強制送還については、まず「犯罪者や前科のある」移民に焦点を絞るが、その数は200万人から300万人にも及ぶと推定される、とCBSに語っている。
●「水責め」
トランプ氏は選挙期間中、テロ容疑者の尋問方法として、米国は水責めや「その他多くの」方法を復活させるべきだと述べていた。水責めは、容疑者を疑似的に溺れさせる尋問方法だが、拷問に相当すると広く認識されており、オバマ政権によって禁止された。
トランプ氏は22日付NYT紙とのインタビューで、新政権の国防長官候補として有力視されているジェームズ・マティス元中央軍司令官に水責めについて意見を求めたところ、「経験上、タバコが1箱とビールが数本あれば、拷問よりもうまくやれる」との回答に感銘を受けたと語った。
これで考えが変わったわけではないとしながらも、トランプ氏は、水責めが「多くの人が思うほどの違いを発揮しないかもしれない」という印象を持ったと述べている。
(翻訳:エァクレーレン)
Frances Kerry
[25日 ロイター]