強気なイギリスのフィンテック業界「従来型企業が危機のEU離脱こそチャンス」
8月8日、世界有数のフィンテック集積拠点としての英国の将来は、EU離脱決定を受けて黄信号が灯ったように見えるが、金融サービスのイノベーターという英国の名声はEU離脱を乗り越えるかもしれない。写真はロンドン・カナリーワーフのLEVEL39で5日撮影(2016年 ロイター/Jemima Kelly)
世界有数のフィンテック集積拠点としての英国の将来は、欧州連合(EU)離脱決定を受けて黄信号が灯ったように見えるが、金融サービスのイノベーターという英国の名声はEU離脱を乗り越えるかもしれない。
フィンテック関連の新興企業は国民投票直後こそ、英国がEU単一市場へのアクセスを失い、人材も流出、外国人投資家からも敬遠され、フィンテックセクターにおける英国の立場が弱くなると懸念していた。
単一市場へのアクセス維持は特に重要だが、英政府がEUとの交渉でどのような合意を目指すのか明らかにしておらず、不透明なままだ。
こうしたなか、多くの企業では様子見ムードが広がり、一部には「英国離脱」を検討したところもあったという。
しかし、フィンテックセクターの新興企業は今やEU離脱という現実を受け入れ、前向きな姿勢すら示しているようだ。実際、マーケットインボイスなど複数の企業が国民投票後、資金調達に成功している。
マーケットインボイスに720万ポンド(約950万ドル)投資したポーランドのベンチャーキャピタル、MCIキャピタルのシニアパートナーであるシルベスタ・ジャニク氏は「英国民投票の結果を受けて、フィンテックへの投資をリスクととらえる向きも多いかもしれない」と指摘。「われわれは逆に、景気悪化と旧来型の銀行セクターの低迷は、フィンテックにとって成長のチャンスになり得ると考えた」という。
ブレグジットはチャンス
スペインの銀行サンタンデールのロンドンを拠点とするフィンテック専門ベンチャーキャピタル、サンタンデール・イノベンチャーズは先月、投資規模を2億ドルに倍増すると発表。マネジングパートナーのマリアーノ・ベリンキ氏は、英EU離脱を受けてフィンテック企業がロンドンを離れるという話は「現実ではない」と強調した。