トランプはなぜプーチンを称賛するのか
Carlo Allegri-REUTERS
<バルト三国やウクライナ、日本といった同盟国のことは歯牙にもかけないトランプが、ロシアにだけは気安く、甘いのはどういうことか? 様々な疑問が出てきている>
米民主党全国大会の開幕直前に民主党全国委員会(DNC)のサーバーから盗まれたメールが公開された。同党のバーニー・サンダース候補の足を引っ張る画策をしていたとして、デビー・ワッサーマンシュルツDNC委員長は辞任に追い込まれた。
ヒラリー・クリントンの大統領候補指名を目前にこのドタバタ劇を仕組んだのは、ロシア政府系のハッカー集団と見られている。共和党の大統領候補ドナルド・トランプはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と政商たちに借りがあるのではないか、という噂と状況証拠も出てきている。いったいロシアはどこまで米大統領選とアメリカ政治に影響力を行使しているのか。
大統領候補にあるまじき行為
トランプは、こともあろうにそのロシア政府系ハッカーにもっとクリントンの秘密をリークして欲しいと呼び掛けた。クリントンが国務長官時代に私用のメールアカウントを使って公務のメールのやりとりをしていたことが発覚した後、クリントンが個人的なメールだとしてサーバーから削除した約3万通のメールのことだ。
昨日の記者会見でトランプは、こう言った。「あのハッカーたちは例の3万3000件の電子メールも持っているはずだ。クリントンが削除し失われたメールだ。そこにどんなおいしいネタが隠されているか、大いに楽しみだ」
【参考記事】常軌を逸したトランプ「ロシアハッキング」発言の背景
大統領候補が前国務長官の秘密を探るようロシアに依頼するなど常識では考えられない。安全保障に関わる問題だ。そうでなくても、ロシアはトランプを勝たせるために米大統領選に介入しているという疑いがある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はトランプを褒めそやし、トランプもプーチンに賛辞を惜しまない。
一方でトランプはロシアの隣でNATOに加盟しているバルト3国に対し、ロシア軍が侵攻しても米軍の支援を当てにするな、とまで言ってきた。
【参考記事】トランプ、NATO東欧の防衛義務を軽視
トランプは以前、プーチンを「非常によく」知っているとうそぶいていたが、27日の記者会見では前言を撤回し、「プーチンとは会ったことがない。どんな人間か知らない」と言った。
トランプはこうも言った。「彼は1つだけ私を褒めてくれた。私が天才だと言ってくれたんだ。それを報じた新聞には感謝したが、プーチンとの関係はそれだけだ」