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ゲリラ豪雨を育てるミクロの粒子

2016年7月12日(火)16時00分
ゾーイ・シュランガー

 ただし影響力は地域によって差があるようだ。南アジアと中南米では、雲の寿命を変える因子の約20%を占めているのが、大気中におけるエアロゾル粒子の含有量だという。だがアフリカではそこまでの影響は見られず、エアロゾル粒子は寿命を左右する因子の約8%にすぎない。

 地球工学の分野では水不足や干ばつの対策にエアロゾル粒子を利用する研究が、既に始まっている。

 一部の政府と研究者は、「クラウド・シーディング(雲の種まき)」の実施を検討している。これは化学的に合成したエアロゾル粒子を小型飛行機で大気中に噴射して人工的に雨雲を作り、干ばつに苦しむ地域に雨を降らせる試みだ。

 例えば砂漠の国であるアラブ首長国連邦(UAE)は、海水から塩分を抜いて水を確保している。だがこの脱塩処理には大きなコストがかかる。クリスチャン・サイエンス・モニター紙によれば、政府は人為的に雨を降らせようと今年だけでも既に約100回飛行機を飛ばしているという。

 エアロゾル粒子は命を脅かすほどの豪雨を降らせる一方で、恵みの雨のもととなる可能性も秘めているのだ。

[2016年7月12日号掲載]

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