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自衛隊防衛省が迎撃ミサイルPAC3改修へ、東京五輪に向け能力強化
7月29日、北朝鮮の挑発行動に懸念を強める防衛省は、2020年の東京五輪開催に向け、来年度から迎撃ミサイル「PAC3」の改修に着手する。写真はPAC3と自衛隊員、都内で2012年12月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)
北朝鮮の挑発行動に懸念を強める防衛省は、2020年の東京五輪開催に向け、来年度から迎撃ミサイル「PAC3」の改修に着手する。
飛距離、精度とも向上を図り、進歩がみられる北朝鮮の弾道ミサイルへの対処能力を強化する。複数の関係者が明らかにした。
PAC3はトレーラー式の移動ミサイルで、発射機やレーダーなど複数の装備で構成。自衛隊が保有するすべてのシステムの改修を終えるには、多額の費用と数年間に及ぶ時間を要する。
このため東京五輪に向け、首都圏に配備する装備を先行させる。来年度予算には1000億円程度の費用を盛り込む方向で調整している。
改修により飛距離が現行PAC3の2倍の約30キロまで伸びるほか、より速度の速い弾道ミサイルも補足が可能になる。「北朝鮮の『ムスダン』に対応するには、PAC3の能力向上が必要だ」と、関係者の1人は言う。
北朝鮮は今年に入り、ムスダンとみられる新型の中距離ミサイルを5発発射した。うち4発は失敗したものの、6月に発射した最後の1発は高度1000キロ以上に達し、約400キロを飛行した。日本政府は、一定程度の技術的な進歩があったと分析している。
防衛省は、ムスダンの射程距離を2500キロから4000キロと想定している。実戦配備されれば日本の全域、さらに米領グアムが圏内に収まる。
弾道ミサイルに対し、自衛隊は二段構えで対処する。まず、イージス艦から発射した迎撃ミサイル「SM3」が宇宙空間で補足。撃ち漏らした場合、大気圏に再突入後にPAC3で対処する。
防衛省はSM3の能力向上も米国とともに進めているが、配備時期は決まっていない。新型の迎撃ミサイル「THAAD」の導入も検討している。
防衛省はロイターの取材に対し「具体的なことは何も決まっていない」と回答。改修を請け負うことになる三菱重工業<7011.T>は「民間企業がコメントする立場にない」とした。
(久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)