最新記事

英EU離脱

イギリス・メイ vs ドイツ・メルケル、「鉄の女」2人が握るEUの命運

2016年7月14日(木)18時45分

7月12日、英国の離脱交渉では、出自の似た2人の女性首脳が一戦を交えることになる。写真は英次期首相のメイ氏。英バーミンガムで11日撮影(2016年 ロイター/Andrew Yates/File Photo)

 欧州連合(EU)離脱派が多数を占めた英国民投票を受け辞任したキャメロン英首相の後を継ぐメイ次期首相。そして、EU加盟国のどの首脳よりも影響力のあるドイツのメルケル首相。ともにキリスト教の聖職者の家に生まれ、類まれな頭脳を持ち、並み居る男性政治家を押しのけて保守政党のトップに上り詰めた。英国の離脱交渉では、出自の似た2人の女性首脳が一戦を交えることになる。

 59歳のメイ氏はオックスフォード大で学び、ドイツ政府幹部は「とてもしつけのいい女性」と評する。この6年間、内相を務め、フランスのカズヌーブ内相と非常に良い関係を築いているともいわれる。

 61歳のメルケル氏は2005年の総選挙で華々しい活躍をしていた社会民主党のシュレーダー前首相を破り、首相の座に10年就いている。英国民投票後にはフランス、イタリアの両首脳と会談しEUの将来について協議するなど、重要な役割を担っている。

 EU基本条約のリスボン条約によると、離脱の手続きは英国以外の加盟27カ国の首脳で構成する欧州理事会で決定しなければならない。

 メルケル、メイ両氏の共通理解は、国民投票の結果を尊重し「離脱を決めたら離脱する」だ。だが、譲れない一線もある。

 メイ氏は離脱手続きを急ぎたくない。一方で、メルケル氏は英国に対し早急に離脱に向けた主張を明確にするよう望んでいる。

 メイ氏の最も重大な使命は、英国によるEU単一市場へのアクセスを確保した上で、EUからの移民を制限することだ。他のEU加盟国首脳は、人の移動の自由が確保されてこそ市場のアクセスは可能になるとの立場を示している。メルケル氏もドイツにとって5番目のモノの貿易相手国である英国との強力な関係は保持したいが、それよりも重要視しているのは、EU27カ国の団結だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、レバノン北部のシリア国境を初空爆 輸送

ワールド

停戦合意発効、おおむね順守 レバノン南部に避難者戻

ビジネス

仏国債スプレッド、ユーロ圏債務危機以来の幅に拡大 

ビジネス

ECB、漸進的に中立金利まで向かうべき=シュナーベ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 5
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 6
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 7
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 8
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中