最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

ヒラリー勝利宣言でも撤退しないサンダースの深謀

2016年6月9日(木)16時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

Lucas Jackson-REUTERS

<民主党予備選ではヒラリーが指名獲得を確実にしたが、それでも対抗馬のサンダースは撤退を表明しない。しかしサンダースには、自分が盛り上げてしまった党内の「アンチ・ヒラリー」ムードを予備選の最後局面で収束させたい深謀がありそうだ>

 今週7日は、大統領選予備選の最後のヤマ場となった。すでに決着のついている共和党の場合は形式的な選挙だったが、注目されたのは民主党だ。

 とは言っても、予備選で決まる「プレジッド代議員」に加えて、党幹部や連邦議員などで構成される「スーパー代議員」を含めた獲得代議員数で、ヒラリー・クリントン候補は6日の時点で過半数のマジックナンバーに達していた。したがって7日の予備選は、その結果を踏まえてライバルのバーニー・サンダース候補が「どう出るか?」が関心を集めた。

 結果的に7日の予備選はヒラリーの大勝に終わった。モンタナとノースダコダでは、銃と格差の問題でサンダースが勝利したが、ニューメキシコでヒラリーは勝利し、筆者の住むニュージャージーでは「63%対37%」という大差でサンダースを圧倒した。一時は支持率で僅差と言われていたカリフォルニアでも、10ポイントの大差をつけてヒラリーは勝っている。

 予備選結果によって比例配分される各州の「プレッジド代議員」の数でも、ヒラリーはサンダースを上回って過半数以上が確定した。ヒラリーの勝利はますます揺るぎないもので、反対にサンダースの敗北は確定したと言って良い。

【参考記事】ヒラリー・クリントン、トランプに利用されかねない6つのスキャンダル

 またこの7日の時点で、ニューヨーク・タイムズは「資金枯渇により、サンダース陣営は選挙スタッフの半数を解雇する見通し」という報道をしているが、陣営側はこの報道を否定していない。そんな中で7日の深夜11時(太平洋時間)、つまり東部時間では8日の午前2時過ぎからカリフォルニア州のサンタモニカで開かれた集会で、サンダースの演説が始まった。

 若者を中心とする多くの支持者が集まる中で、サンダースはトレードマークの「拳を振り上げる」ポーズを取りながら「我々の政治革命はまだ続く」と叫んでいた。そして、「来週のワシントンDCの予備選(大勢に影響はないが予備選日程の最後に組まれているもの)でも戦い続け」、さらに「(7月の)フィラデルフィア(での党大会)にも乗り込む」と宣言した。

 それでは、依然として「アンチ・ヒラリー」のムードを強く抱えるサンダース陣営は、党の分裂という事態も辞さない構えで選挙運動を続けるのだろうか?

 必ずしもそうとは限らない。少なくともこの日の演説の全体には、やや違ったメッセージが埋め込まれていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国防長官に「全幅の信頼」と報道官 親族

ビジネス

米CB景気先行指数、3月は0.7%低下 関税巡る不

ワールド

プーチン氏「和平構想に前向き」、復活祭停戦後の戦闘

ビジネス

トランプ氏、早期利下げ再要求 米経済減速の可能性と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボランティアが、職員たちにもたらした「学び」
  • 2
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投稿した写真が「嫌な予感しかしない」と話題
  • 3
    遺物「青いコーラン」から未解明の文字を発見...ページを隠す「金箔の装飾」の意外な意味とは?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    なぜ? ケイティ・ペリーらの宇宙旅行に「でっち上…
  • 9
    ロシア軍、「大規模部隊による攻撃」に戦術転換...数…
  • 10
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中