最新記事

アメリカ政治

大統領候補の高齢化が示すもの

クリントンとトランプが勝ち残れば史上最高齢の対決となるが

2016年4月20日(水)16時00分
ザック・ションフェルド

45歳 現代で最も若い候補の対決だった1960年のケネディとニクソンの平均年齢 Illustration by Kagan Mcleod

 アメリカ政治史に与えるインパクトという意味では今、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプに勝る存在はいない。

 クリントンが選出されれば「初の女性大統領」だし、トランプが選ばれれば「全国放送で自分の股間のサイズについて主張した初の大統領」になる。

 しかし同時に、現在69歳のトランプが大統領になった場合、1期目の就任時の年齢ではアメリカ史上最高齢。クリントンにしても1歳若いだけだ。2人の対決になれば、投票日の11月8日時点で2人の平均年齢は69.5歳と、史上最高齢になる。

【参考記事】「失言」89歳記者は偉大だったのか

 現代の大統領選で最も若い候補の対決は1960年。投票日時点で43歳だったジョン・F・ケネディと47歳だったリチャード・ニクソンだ。民主・共和両党の指名候補が65歳を超えていたことは、これまで一度もない。

 過去の高齢者ペア対決を強いて挙げるなら1848年。ホイッグ党のザカリー・テイラー(当時63)と民主党のルイス・カス(同66)だ。勝ったのはテイラーだったが、彼は大統領就任から2年もたたずに死んだ。

 もっとも、今では年齢の持つ意味も違う。「現在の70歳はかつての55歳だ」と、先頃新著『正当な遺産/フランクリン・D・ルーズベルトとアメリカ』を発表した歴史家ダグラス・ブリンクリーは言う。「昔は65歳が定年だったが、そんな決まりはもはや過去のものだ」

【参考記事】定年年齢引き上げにフランスがNON!

始まりはレーガン大統領

 大統領の年齢に対する意識を変えるきっかけとなったのは、ロナルド・レーガンだろう。彼は米史上最高齢の77歳で大統領を退任したが、エネルギーと気力の衰えは見られなかった。

 今回の大統領選では、年齢の高さは候補のスタミナと知名度の証しでもある。クリントンもトランプも数十年前から全国的に有名で、政界に詳しくない有権者でさえ知らない人はいない。

 政治の世界では、若さが常に有利な要素とは限らない。少し前まで共和党の指名獲得レースに加わっていた44歳のマルコ・ルビオに、トランプが付けた辛辣なニックネームは、人々の記憶に深く刻まれた。

【参考記事】トランプとの「お下劣舌戦」で撃沈したルビオ

「リトル・マルコ」──ルビオにとっては残念だが、こう呼ばれたことのほうが語り継がれることになるかもしれない。

[2016年4月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中