最新記事
シリアアサドやISISより多くの民間人を殺したロシア
ロシアは民間人が多い市街地を標的にしている?
「的は外さない」 2月15日にミサイル攻撃を受けたアレッポの病院。攻撃したのはロシアとも Social Media Website-REUTERS
先月、ロシアはシリアでシリア政府軍やISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)よりも多くの民間人を殺害したことが、独立監視組織のシリア人権ネットワーク(SNHR)の報告書から明らかになった。
SNHRはシリア各県の公務員を対象に調査を行い、死者数に関する情報を確認している。報告書によると、1月にロシアの空爆の犠牲になった民間人は679人で、うち94人が子供、73人が女性だという。
【参考記事】プーチンはなせ破滅的外交に走るのか
この数字は、シリアのアサド大統領率いる政府軍の攻撃で命を落とした民間人の推定死者数よりも多い。
イスラム過激派組織のなかで1月に住民の命を最も多く奪ったのはISISで、その数は98人にのぼる。この数字は、42人を殺したアルカイダ系のヌスラ戦線よりも大きい。1月にシリアで犠牲となった住民の総数は1,382人だった。
SNHRによると、ロシアの攻撃による死者は、主要都市アレッポやデリゾール、イドリブ、ラッカなど、紛争の激しい都市に集中している。
SNHRは、アサド政権とロシア軍は「国際人権法の原則に違反している」と主張している。
「すべての証拠と目撃者の証言から、広範囲に及ぶ攻撃、ならびに個別の攻撃の90パーセント以上が、一般市民と民間施設を標的にしていたことがわかる」と報告書には書かれている。
この報告書に対して、ロシア国防省は直ちに反応はしなかった。しかしロシア政府は以前から、同国の軍事行動が一般市民を巻き添えにしたことはないと繰り返し述べてきた。
ロシア国防省の報道官で、空爆に関する記者会見を定期的に開いているイゴール・コナシェンコフも先月、ロシア空軍は「民間人の死者が出る恐れがある場合には、そのような標的に対して空爆の計画さえ立てない」と語っていた。
【参考記事】復活したロシアの軍事力──2015年に進んだロシア軍の近代化とその今後を占う
ロシア空軍のヴィクトル・ボンダレフ上級大将は2015年12月、「ロシア空軍が一般市民に対してクラスター爆弾を投下した可能性がある」とする人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの非難をはねつけ、ロシア空軍のパイロットは「シリアにいるとき、一度たりとも的を外したことはない」と話した。