【地図で読む】18歳以下の「子供兵士」は世界に約25万人いる
基本的な権利が守られていない子供だけでなく、戦闘に参加させられている子供も少なくないことが地図から読み取れる
例えば、テロ組織のISIS(自称イスラム国、別名ISIL)はイラクとシリアにまたがる地域を支配し、シリア難民はヨーロッパだけでなく、隣国のトルコ、レバノン、ヨルダンにも多く逃れている。例えば、米軍の駆逐艦派遣により米中の緊張が高まっているのは南シナ海で、そこでは中国以外にも、ブルネイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムが領有権を主張している。
そういったニュースを聞いても、ピンとこない人は少なくないだろう。シリアは中東のどのあたりにある? 南シナ海はどこからどこまでを指す? 日々流れてくるニュースは膨大だし、世界はあまりに複雑だ。いかに大切でも、「世界の今」を理解するのは簡単ではない。
そんなときに役立つのが、地図だ――。フランスの人気TV番組から生まれた『最新 地図で読む世界情勢 これだけは知っておきたい世界のこと』(鳥取絹子訳、CCCメディアハウス)は、その名のとおり、地図を軸に据えた入門書。フランス地政学の第一人者であるジャン=クリストフ・ヴィクトルと、高校(リセ)の地理・歴史教師であるドミニク・フシャールおよびカトリーヌ・バリシュニコフが、美しい地図と写真でわかりやすく解説している。
移民や難民、貧困ライン、温室効果ガス、ジェネリック医薬品、スラム街、デジタル・ディバイド、多国籍企業、マイクロクレジット、生物多様性......。「世界のしくみがひと目でわかる!」と謳い、50以上の地図を収録した本書から、5つのテーマを抜粋し、5回に分けて掲載する。
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『最新 地図で読む世界情勢
――これだけは知っておきたい世界のこと』
ジャン=クリストフ・ヴィクトル、ドミニク・フシャール、
カトリーヌ・バリシュニコフ 著
鳥取絹子 訳
CCCメディアハウス
※第1回【地図で読む】サッカーもジーンズも、グローバル化でこう変わった:はこちら
《1人の子供の1粒の涙は、何をもってしても償つぐなえない》――フョードル・ドストエフスキー[19世紀のロシアの小説家]
<上の地図 世界の子供兵士>
18 歳以下で軍または武装組織に所属し、直接または間接的に戦闘に参加する兵士を子供兵士と呼ぶ。世界では約25 万人おり、うち3分の1以上がアフリカだ。アジアでは、ミャンマーが5万人ほどの子供兵士を雇っていると言われ、この数は子供兵士のいる国では世界一である。
子供にも権利がある
1989 年、世界の多くの国の指導者が集まった第84 回国連総会で、18 歳未満の子供たちは、世界を通して、紛争や暴力のいちばんの犠牲者であることが認められた。その国連総会では、子供たちはとくに保護されなければならないことが採択され、そのための条約「子供の権利条約」が成立した。これは子供の権利を明言し、署名各国(アメリカとソマリアだけが署名しなかった)にそれを守ることを義務づけるものだ。それによって、子供たちは自分たちに認められた権利を主張することができる。
ヨーロッパでは30 の国が、子供なら誰でも連絡して相談できる「子供の権利擁護機関」を設置している。しかし、外国から1人で来た子供や、不法滞在の両親の子供など、一部の子供たちに対して法律は必ずしも適用されておらず、その権利が守られないこともある。