最新記事

中国政治

中国「反スパイ法」、習近平のもう一つの思惑

日本人にも適用された反スパイ法、施行前からあった兆候に見る真の狙い

2015年10月2日(金)16時27分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

明かされた過去 ネット上で初めて、「売国奴」と元国家主席の秘められた血縁関係が明かされた Yukio Nakano-REUTERS

 中国外交部は日本人2名をスパイ活動容疑で逮捕したと明言した。「反スパイ法」は「外国人をも対象とする」特徴を持っているが、実は反スパイ法制定前にもう一つの重要なシグナルを発していた。習近平の思惑を読む。

 筆者は2014年11月4日付けの本コラム「日中首脳会談――今はそれどころではない習近平」で、同年11月1日に制定された「反スパイ法」の特徴の一つを、「外国スパイと中国国内の組織または個人が連携するという項目が加わり、強調されたことである」と書いた。

 それもあるが、ここではもう一つの「背後に潜んでいる習近平の深い思惑」を解明したい。

反スパイ法制定直前に起きた異常現象――江沢民の父親に関する情報が解禁

 反スパイ法が制定された年(2014年)の5月から10月末にかけて、中国のネット空間で最も使われている検索サイト「百度(baidu)」で、異常な現象が起きている。

 それは江沢民の祖父である「江石溪」および江沢民の父親(実父)「江世俊」に関する情報が解禁されたことだ。5月に解禁された情報の一部は削除されたが、反スパイ法が制定される前夜である10月29日および10月30日に集中的に解禁された江沢民の実父に関する情報は、今もなお残っている。

 その内容の概略は以下のようなものである。

 いくつもあるが、「蟹児(Share)」というウェブサイトでまとめている情報に基づいてご説明しよう。

●百度紹介:江世俊は(日中戦争時代の)日本の傀儡だった汪精衛(汪兆銘)政権の宣伝副部長をしており漢奸(かんかん)(売国奴)だった。彼はその息子を出世させるために(南京)中央大学に行かせた。中央大学は日本軍が高級漢奸を養成し皇民化教育を施す日本傀儡政権の最高学府であった。その息子は第4期青年幹部養成に参加している。鉄のような証拠写真が山のようにある。2014年10月31日10:48

(筆者注:その息子の名前は、ここでは書いていない。)

●百度百科【江石溪】これは2014年10月29日に百度で初めて現れた情報だ。皆さん、江石溪の子女たちが誰であるかを自分でしっかり確かめよう。そこに江世俊と江上青に関する情報が書いてあるのは、衝撃的なことだ。2014年 10月31日 10:15

(筆者注:江上青は革命烈士で、江沢民が自分の出自を隠すために売国奴である実父の弟の江上青の養子になったと偽っている)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中